哺乳類の中で冬眠するものと言えば、熊ややまねなどが知られているが、厳しい冬を乗り越える最適の方法と言える。本書はこの冬眠のメカニズムを解き明かしたもので、非常に興味深い。結論から言うと、冬眠を誘導するのは、体内の四種の蛋白質で、冬眠特異的蛋白質(略してHP)と名づけられるものであることが分かった。実験に使われたのはシマリスで、これの心臓を解剖実験しながら試行錯誤を繰り返し、心臓のカルシウムイオンの調節の実験から、体内の冬眠物質の存在を予見するところは、推理小説をよんでいるような面白さがあった。冬眠は長寿とかかわりがあって、ヒトの冬眠能力を周期的に高めることができれば、シマリスがそうであるように、病気を減らし細胞の若返りを促進し、若々しい長寿が可能だと著者は言う。曰く「夏には活発に活動し、秋に脂肪を蓄え、冬は蓄えた脂肪を燃焼させながらゆったりと暮らす、季節変化に同調した生活が重要なのである。特に冬の間はストレスやエネルギーの消耗は避けなければならない。このような生活の下で、ヒトにも存在が推測されるHP受容体を活性化できれば、シマリスとまではいかなくとも、冬眠能力を高め若さを保ちながら二、三倍の寿命を持つことぐらいはできるかもしれない」と。
しかしヒトは飽食に浸り、昼夜も季節も区別なく活動し続ける生活を送っているため、自然の変化に合わせて体を最適な状態に調節する冬眠能力が失われつつある。すると体の疲弊にによる病気の発生と老化の傾向を助長することになる。自然に逆らって生きていくことの弊害はこの冬眠の研究で明らかになった。老子の言う「無為自然」の哲学が再認識できると思う。小賢しい人為(作為)は無為自然の道からみれば取るに足りないものなのだ。
しかしヒトは飽食に浸り、昼夜も季節も区別なく活動し続ける生活を送っているため、自然の変化に合わせて体を最適な状態に調節する冬眠能力が失われつつある。すると体の疲弊にによる病気の発生と老化の傾向を助長することになる。自然に逆らって生きていくことの弊害はこの冬眠の研究で明らかになった。老子の言う「無為自然」の哲学が再認識できると思う。小賢しい人為(作為)は無為自然の道からみれば取るに足りないものなのだ。