読書日記

いろいろな本のレビュー

すきやばし次郎 鮨を語る 宇佐美 伸 文春新書

2009-11-12 21:57:31 | Weblog
 すきやばし次郎といえば、『すきやばし次郎 旬を握る』(里見真三・文藝春秋)が有名だが、本書はその続編というべきもので、すきやばし次郎こと小野二郎の一代記だ。小野は現在八十四歳で、現役だ。その鮨哲学は職人の生き方そのもので、興味深い。すし屋といえば、食わしてやるという感じの職人が多くて、客は職人の機嫌を伺いながら食べるという図式が思い浮かぶが、すし屋の唯我独尊ぶりを徹底的に批判していたのが、故山本夏彦氏だ。たかがすし屋風情が偉そうにすんなということをあちこちで書いていた。氏はまたすし屋の符丁を半可通の客がまねる風潮をこれまた徹底的に批判されていた。例えば、「お茶」を「上がり」というが、これは食後のお茶をすし屋の側でいう符丁だ。なのに来店して座る間もなく「上がりちょうだい」と言って粋がっているのがいるが、全く話にならない。「お愛想」もそうだ。客は「お勘定」というべきなのだ。ことほど左様に、すし屋を巡っては話題にこと欠かない。
 すきやばし次郎のモットーは鮨のうまさを味わって欲しいということだ。従って、ビールを飲みつつ職人とべらべらしゃべりながらというスタイルはとらない。お任せコース(3万円)を出されるままに黙々と食べるのがここの流儀らしい。その間30分足らず。これを高いと見るかどうかはその人の主観によるが、こちらは行ったことがないのでコメントできないが、巨匠のお任せコースに身を任せていただくのも悪くはないと思う。是非一度行って見たいものだ。小野氏が偉いのは、回転寿司についてもその存在意義を認めてそれはそれで面白いと誉めている事だ。その道を究めた人間だからこそ言える余裕のコメントだ。人間こうでなくてはならない。だから店も繁盛するのだろう。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。