
マリリン・モンローという女 藤本ひとみ 角川書店
モンローの伝記風小説。表紙の写真が気にいって読んだ。少女期を不幸な家庭に育ち、一時は孤児院にも入っていたノーマ・ジーンは愛されることに飢えていた。それと同時に天与の美貌を武器にモデルからハリウッドスターへと階段を昇る中で次々と男を換えて行く。大リーガーのジョー・ディマジオ、大作家 アーサー・ミラー、大統領のジョン・ケネディと華麗な男遍歴だが、ジーン(モンロー)の中ではすべての恋に必然性があった。それはつらい毎日を乗り切るために、別の人格を作り出したことと関係がある。本書はジーン、グリーディ、モンローの三人の人格を登場させて、彼女の葛藤を描くというスタイルをとっている。これは成功して、彼女の複雑な人生をリアルに描くことができた。
モンローはアメリカのセックスシンボルとして燦然と輝いていた。今のハリウッドにはこれほどの女優はいない。時代が違うといえばそれまでだが、これほど華麗な男関係は空前絶後だ。しかし、彼女の中では女優としての成功の影に、愛されることへの欲望が絶えず渦巻いており、この心の隙間は埋められることが無かった。その空虚感を慰めるために「薬」を常用する。その挙句の死。一つの時代が終わる。ハリウッドスターの光りと影。このまとめ方はいかにも月並みだが、そうとしか言いようがない。マリリン・モンロー ノーリターン。折りしも、我が国では女優 大原麗子が孤独死したというニュースが流れた。栄光の後の孤独。合掌。