東京・台東借地借家人組合1

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【Q&A】 離婚による借地権分与は無断譲渡になるのか 

2005年07月13日 | 承諾に関して

  離婚による財産分与や夫婦間の
    無断借地権譲渡は契約解除原因になるか


 (問) 夫と協議離婚することになりました。離婚の条件として夫名義の建物を分与されることになりましたが、地主との関係はどうなりますか。


 (答) 民法621条は賃借権の譲渡および転貸の制限をしている。「①賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、または賃借物を転貸することができない。②賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用または収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。」(民法621条)。

 借地上の建物の所有名義を変更することは、借地人の変更を意味し、借地権の譲渡又は転貸があったことになる。借地人が借地権を第三者に譲渡する時は、地主の承諾を得ることが必要であり、それをせずに建物を財産分与して夫から妻への所有権移転登記をしたことが地主に露顕した場合、借地権の無断譲渡として借地契約の解除理由になる(民法612条)。

 しかし、賃貸人(地主)の承諾なく借地権が譲渡された場合でも、それが賃貸人に対する背信行為とならないときは、賃貸人は借地契約を解除した上で、建物収去土地明渡請求をすることが出来ない場合がある

 例えば、①夫が宅地を賃借し、妻はその借地上に建物を所有して同居生活をしていた事案。夫婦の離婚に伴い、夫が妻へ借地権を譲渡した場合、「貸主は同居生活及び妻の建物所有を知った上で夫に宅地を賃貸したものである等の事情があるときは、借地権の譲渡につき貸主の承諾が無くても貸主に対する背信行為とは認められない」(最高裁1969年4月24日判決)。特段の事情があるときは、借地契約の解除を認めていない。

 また、②借地人と共同して鮨屋を経営していた内縁の妻が夫の死亡後、その相続人から借地権の譲渡を受けたのに対して地主が無断譲渡を理由に借地契約を解除した事案。地主の承諾無く借地権が譲渡された場合でも、地主が借地人と内縁の妻が共同生活をしている事実を知っていったという事情がある時は、「賃貸人にたいする背信行為と認めるに足りない特段の事情があるときは、賃貸人は民法612条2項による賃貸借の解除をすることができない」(最高裁1964年6月30日判決)。

 夫婦間の借地権の譲渡や転貸、離婚による財産分与としての借地権の譲渡は、土地の使用収益の実権を持つ主体が変化するのであるから、本来的には貸主との関係では無断譲渡や無断転貸となり、契約の解除原因となる。

 しかし、契約締結時、借地人に配偶者、内縁関係にある者があり、それらの者も借地を使用することを知って地主が貸した場合、その後借地人から借地権が移転しても最高裁の判例は地主との信頼関係を破壊しないと認められる特段の事情がある時は、地主の契約解除及び土地明渡請求を認めていない

 

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【Q&A】 普通借家から定期借家への切替え・立退き

2005年07月12日 | 定期借家・定期借地契約

    定期借家契約でなければ更新しない
     それが嫌なら今すぐ部屋を明け渡せ

 (問) 2年の借家契約は平成12年5月15日に満了した。家主は定期借家契約でなければ契約しないと、契約の切替えを強要した。納得出来ないので契約締結を保留していたら、6月20日契約切れだから7月15日までに部屋を明け渡せと通告して来た。どうしたらよいか。


 (答) ① 既存の借家契約(借地借家法38条「定期建物賃貸借契約」平成12年3月1日施行前に締結された借家契約)から定期借家契約への切替えは居住用借家に関しては特別措置法附則第3条によって禁止措置が採られ、仮に合意の上であっても、居住用普通借家契約から定期借家契約への切替えは法的に出来ない。

 即ち、「施行(平成12年3月1日)前にされた居住の用に供する建物の賃貸借の当事者が、その賃貸借を合意により終了させ、引き続き新たに同一の建物を目的とする賃貸借をする場合には、当分の間、借地借家法第38条の規定は、適用しない。」(特別措置法附則3条)

 ② 借地借家法には、法定更新というものがあり、その規定は次のようになる。賃貸人は、法定通知期間(契約の期間満了の1年前から6ヶ月前まで)に賃借人に対して更新拒絶或は条件変更の通知を行っていないと、借家契約は従前の契約と同一の条件で自動的に更新される(借地借家法26条1項)。

 相談者の場合はすでに5月16日より法定更新されており、契約切れなどしていない。契約は適法に継続している。法定更新後の契約期間は、同26条1項の規定により「定めのないもの」ということになる。以後契約の更新は発生しないので更新料の問題は法的に起こりえない。

 ③ 家主は、7月15日までに明渡しを要求しているが、期間の定めのない契約の場合「建物の賃貸人が賃貸借の解約の申入れをした場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から6月を経過することによって終了する。」(同27条1項)とあるように、解約の申入れをしてから6ヶ月間の法定期間を経過しなければ、解約の効果を生じない。そして、6ヶ月経過後も借家人が借家の使用を継続している場合は、家主は積極的に遅滞なく異議を述べないと、借家契約は法定更新される(同27条2項)。

 ④ 但し、賃貸人の解約の申入れには正当事由がなければならない(同28条)。正当事由の有無の判断は裁判所が認定する。因って、賃貸人の部屋の明渡し要求は、裁判所が「正当事由」有りと認定しない限り法律的に認められないので、すぐ部屋を明け渡す必要はない。だが、今後のことを考えると組合とよく相談し、対処方法を検討して行動されることを勧める。

 

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【Q&A】 借地上建物の借家人が突然地主から家屋の明渡しを要求された

2005年07月11日 | 建物明渡(借家)・立退料

 借地上建物の借家人が借地契約の終了で
   地主から立退きを要求されたが
     

(問) 借地上の建物を賃借していたが、突然地主から借地人(家主)との借地契約の終了を理由に家屋の明渡しを求められた。地主の要求に応じなければならないのか。


(答) 借地人が借地上の建物を第三者に賃貸して、建物を使用させても借地自体を「転貸」したことにはならない(大審院昭和8年12月11日判決)ので、「無断転貸」の問題は惹起しない。建物は借地人の所有物であるから地主の承諾を得る必要はなく、自由に賃貸することができる。     

 しかし、建物賃貸借は土地賃貸借の基礎の上にあるので借地権が消滅した場合には、借地人は建物を収去して土地を明渡さなければならないので、建物賃貸借関係の存続が問題になる。     

  ①「賃貸人、賃借人間で土地賃貸借契約を合意解除しても、土地賃貸人は、特段の事情がないかぎり、その効果を地上建物の賃借人に対抗できない。」(最高裁1963年2月21日判決、民集17巻1号219頁)。すなわち、借地契約が地主と借地人との合意によって解除された場合には、その解除をもって借地上の建物の借家人に対抗出来ないので、地主は借家人に対して建物明渡請求をすることが出来ない。     

  ②借地人の一方的意思による借地権放棄の場合も、①と同様に地主は借家人に対抗出来ない。     

  ③借地契約が正当事由により終了した場合、通常は借地人が建物買取請求権(借地借家法13条1項)を行使することによって借家人の地位が地主に承継されるので借家人は地主(新家主)に対抗出来る最高裁1968年10月29日判決)。従って借家人は従前通り建物の使用収益を継続することが出来る。     

  ④しかし、期間満了で借地人が建物買取請求権を行使しなかった場合、判例では、「借家人は建物買取請求を代位行使することができない」最高裁1980年10月28日判決)とされているので、その場合は、借家人は退去請求に応じざるを得ない。     

 従来は契約期間満了で買取請求権が行使されなかった場合の借家人保護の規定はなかった。だが、「借地借家法」35条で借家人保護の規定が新設された。即ち、裁判所は借家人の請求を受け、借家人の事情などを考慮して1年を越えない範囲の猶予期間を与えることが出来る。この場合、借家契約は猶予期間の終了をもって終る。この規定は、1992年8月1日(「借地借家法」施行)以前の借家契約にも適用される。

 結論、相談者の場合①②③であれば地主の要求に随わなくてもいい。④の場合は、1年以内の猶予期間で退去しなければならない。

 参考
 借地借家法(借地上の建物の賃借人の保護)

第35条 借地権の目的である土地の上の建物につき賃貸借がされている場合において、借地権の存続期間の満了によって建物の賃借人が土地を明け渡すべきときは、建物の賃借人が借地権の存続期間が満了することをその1年前までに知らなかった場合に限り、裁判所は、建物の賃借人の請求により、建物の賃借人がこれを知った日から1年を超えない範囲内において、土地の明渡しにつき相当の期限を許与することができる。

2 前項の規定により裁判所が期限の許与をしたときは、建物の賃貸借は、その期限が到来することによって終了する。

 

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【Q&A】 契約書に更新料支払特約がある場合、更新料の不払が出来るか

2005年07月10日 | 契約・更新・特約

  法定更新された場合は契約書で
    特約した更新料を支払う必要があるのか

(問) 前回の更新の際、更新料支払が一方的に書き込まれていた借地契約書にサイン・押印してしまった。更新が2年後にあるが、更新料は、支払わなければならないのか。


(答) 更新料支払の理由として多くの裁判例で指摘されるのは、
 (a)賃料の不足を補充する趣旨(例えば賃料の前払)
 (b)賃貸人の更新拒絶権・異議権放棄の対価
 (c)合意更新された期間は明渡を求められず、法定更新の場合の、解約申入れの危険を回避出来るという利益の対価、以上三点である。 (a)は、最近余り強調されず、中心は(b)と(c)に移っている。

 更新料特約の効力を法定更新した場合の裁判例で検討すると、 
 ①「肯定説」更新料特約は契約自由の原則によって合意したのであるから合意更新は勿論であり、法定更新にも有効である。即ち更新料特約が有る場合は賃借人は更新料支払の義務がある。 

 ②「否定説」更新料特約は合意更新の場合にのみ有効であり、法定更新になった場合は効力を有しない。即ち法定更新した場合は賃借人に更新料支払の義務はない。

 江東借地借家人組合の組合員(借地人)の実際の裁判例で検討してみたい。
 裁判では、法定更新した場合の契約更新料の支払義務の有無が争点となった。借地人は裁判で前記②説の立場から更新料支払理由の前提となっている(b)と(c)の事実を欠くので地主の更新料請求は根拠がないと主張した。

 だが東京地裁は更新料支払合意が法定更新の場合を除外するものとは認められないとして(b)と(c)を否定し、①の立場から更新料支払を命じた(2000年3月13日判決)。

 それに対して、東京高裁は借地人の主張を認め、②の立場から借地人に更新料支払の義務はないと判示した2000年9月27日判決)。借地に関してはこの見解が裁判例では有力になっている。

 地主側は東京高裁の判断を不服として最高裁へ上告したが、最高裁は上告を棄却した(2002年2月22日)。これにより東京高裁の更新料特約があっても法定更新した場合は更新料の支払い義務がないという判断肯定された。

 既に、②の見解に立つ同趣旨の借家に関する最高裁の判例(1982年4月15日)がある。

 

 相談者は法定更新を選択すれば裁判例から更新料の不払は可能である。但し実行する場合は組合の顧問弁護士とよく相談する必要がある。

 

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【Q&A】 退去の際、取付けたエアコンを家主に買取らせることが出来るか 

2005年07月09日 | 借家の諸問題

  造作買取請求権を使ってエアコンを
    家主に買取らせることが出来るのか

(問) 次の引越先の部屋にはエアコンが完備されているので、1年前に取付けたエアコンが無駄になる。家主に買取ってもらえないものだろうか。エアコンを取付け時に家主の了解は得ている。


(答) 「借地借家法」33条1項は、建物の賃貸借が期間満了又は解約の申入れによって終了する時に、賃貸人の同意を得て附加した造作を時価で買取るよう請求することが出来ると定めている。これを造作買取請求権という。

 条文では買取りを請求できる造作は、賃貸人の同意を得て附加したものであるとなっている。
(1)この同意は造作を附加する前でも後でも差支えない。また、同意はは明示でも黙示でも構わない。
(2)建物使用のために必要不可欠である造作は、契約締結の中に、すでに、その附加に対する同意が含まれている。
(3)それ以外の造作は賃貸人が造作の附加を知りながら、あえて異議を述べなかった場合は黙示の同意ないし事後承諾と認められる。
(1)~(3)は「新注釈民法(15)」760頁

 造作とは水道・ガス・電気設備等である。これらは建物の使用収益のために存在する造作を建物から分離すると、その価値が減少するのが通例である。取外したのでは借家人の投下資本の充分な回収が出来ない。

 そこで、造作買取請求権により、借家人が借家に改良を加えた場合、家主に対し、その造作の時価での買取りを請求出来るようにして、借家人の投下資本回収を図らせている。

 改良を加えた結果が建物に吸収された時は、有益費償還請求権の規定(民法608条2項)により、投下資本を回収することが可能である。

 「造作買取請求権の性質は形成権であるから、借家人が家主に買取りを請求するだけで、家主の承諾を要することなく、造作について売買契約が成立したと同一の法的効果を生ずる」(大審院1927(昭和2)年12月27日判決)。

 このように、借家人の一方的な意思表示だけで家主に造作を買取らせる法律効果がある。だが、借家人の言い値で造作を買取らなければならない訳ではない。法律は、造作を「時価」で買取る旨を規定している。


 判例では、時価をどう判断しているのか。
特段の事情がない限り、1年数ヶ月前になされた造作工事費用の総額をもって、造作が現に有する価格であると解すべきである」(東京地裁1971(昭和46)年3月31日判決)。

 また造作を附加して1年3ヶ月の造作に対して「造作を設置するために支払われた費用額を造作の時価とするのを相当とする」(東京高裁1956(昭和31)年3月22日判決)。

 結論、相談者の場合、造作買取請求権を排除する特約を結んでいないので、エアコンの買取りを家主に請求出来る。その場合、取付けて1年しか経過していないので、判例にあるように、エアコンの設置に要した総額を時価として支払うよう要求出来る。


 なお、旧「借家法」5条の買取請求権は強行規定であるから、特約で買取請求権を排除することができない。しかし、平成4年施行の「借地借家法」33条1項では任意規定化され、買取請求権を排除する特約は有効とされている。従って、「借地借家法」施行前の借家契約であっても、施行後に買取請求権を排除する特約を締結すれば、その特約は有効となる。

 

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【Q&A】 借地権を売却したいのだが、地主が借地譲渡の承諾をしない 

2005年07月07日 | 地上げ・借地権(底地)売買

借地権を売却したいのだが
無断譲渡だと言って地主は承諾してくれない

 (問) 借地上建物の売却を不動産業者に依頼し、売買契約書を作成し、手付金の授受及び所有権の移転の仮登記も終了している。しかし地主は無断譲渡を理由に、契約解除、土地明渡を通告して来た。


 (答) 建物を譲渡する場合、借地権の譲渡について予め地主の承諾を必要とする(民法612条1項)。

 承諾を得ずに借地権を譲渡すると地主は、無断譲渡を理由に借地契約を解除することが出来る(民法612条2項)。

 契約が解除されると借地人は地上建物を収去し、土地を明渡さらければならない。

 また地主が契約を解除しない場合でも、譲受人は無断譲渡ということで借地権の取得を地主に対抗出来ない。従って、譲受人は土地を不法占拠していることになり、地主から直接建物収去・土地明渡の裁判を申立てられることもある。

 明渡請求に対して譲受人は地主に建物買取請求権を行使することが出来る(借地借家法14条)。条文では建物買取価格は時価ということになっている。

 判例では「建物を取り壊した場合の動産としての価格をいうのではなく、建物が現存するままの状態における価格であって、敷地の借地権の価格は加算すべきではないが、この建物の存在する場所的環境は参酌して算定すべきである」(最高裁昭和35年12月20日判決)。

 最高裁の見解を換言すれば、原則的には借地権価格は建物買取価格には算入しないが、場所的環境の参考資料として借地権価格を加味させるということである。

 東京地裁昭和37年6月25日判決、大阪高裁昭和40年2月4日判決では借地権価格の15%と算定している。しかし、実務的には借地権価格の20~30%位という例が多い。最終的に譲受人は金銭的損害を蒙ることになる。

 このようなトラブルを回避するためにも、地主の承諾に代わる許可を裁判所に申立てて譲渡代諾許可を受けておく必要がある(借地借家法19条1項)。

 申立の時期は「譲渡」の前になされなければならない。譲渡とは建物の所有権の移転の本登記又は引渡を受けて土地を使用する状態と解されている。売買契約を既に締結している場合でもその履行前に申立をしないと「不適切な申立」として却下される。

 相談者は仮登記の状態なので未だ代諾許可の裁判の申立は出来る。この申立をすると裁判所が借地条件の変更や財産上の給付を条件に地主に代わって譲渡の許可をする。

 その場合譲渡許可の承諾料は、特段の事情が無ければ借地権価格の10%を基準額としている。残存期間が5年以下の場合は基準額より2~4%程度増額される。

 但し裁判所に代諾許可の申立をする場合、譲渡する「第三者」は特定されていなければならない。しかし、譲受予定者は必ずしも1人の者に限る訳ではなく、予備的(AでなければB)又は選択的(AまたはBのどちらか)な複数であってもよい。

 また地主は「第三者」に優先して買受ける権利を有している(借地借家法19条3項)。地主は、第三者に貸したくないというのであれば、「優先買受権」を行使して借地権を優先的に買受けることが出来る。従って、借地人が売りたいと思っている第三者に売渡すことが出来ないということもあり得る。

 尚、原則的には、許可後の6ヶ月以内に借地人が建物を譲渡しないと効力は失われる(借地借家法51条)。

 

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【Q&A】 借地権の相続、名義書換料の支払いは必要か 

2005年07月06日 | 承諾に関して

   借地人が死亡し借地権を相続する場合、名義書換料の支払いは必要か 
    また、建物を第三者に賃貸する場合に地主の承諾は必要だろうか


 (問) 父が亡くなり、私が借地権を相続することになりました。相続に当たり地主の承諾は必要ですか。地主は契約書の書換えと、名義書換料を要求してきています。それと、その建物を人に貸すことは出来ますか。建物を人に貸す場合は、地主の許可が必要ですか。 


  (答) 借地権も他の遺産と同様に法的に当然相続人が相続する。親が死亡すると相続が開始され、親の有していた法律的地位が当然に相続人に一体として移転することを包括承継と言う(民法第896条)。

 包括承継は相続法の基本原理とされ、遺産中の不動産・動産のみならず債権や債務を承継するもので、被相続人の地位の承継とも解される。従って相続人は死亡した親の借地権を承継し、地主に対する権利・義務も一切引継ぐことになる。

 地主との賃貸借契約の内容を誠実に履行していれば何らの問題も惹起されない。「土地を借りた本人が死亡したのだから、土地を返してもらいたい」と地主に要求されても、それに応じることはない。

 先ず、相談者の場合は、相続で借地権を譲り受けたので、名義書換の問題は発生しない。よって、地主の承諾は必要ない。名義書換料要求は不当であり、拒否しても何ら問題はない。勿論、契約書を新しく作り直す必要もないので、今まで通りでいい。相談者は、地主に「私が相続人になりました」と通知すればそれでいい。

 次に、借地上の建物を人に貸すことについてであるが、地主の承諾は必要ではない。借家を無断で他人に貸した場合は、転貸ということで契約解除の理由になる。しかし、借地人が地主から賃借しているのはあくまで土地であり、その土地上の建物は借地人の所有物であり、自由に使用収益することが出来る。

 借地契約は、借地人に建物を所有させることを目的とする契約だから、借地人が所有建物を貸して収益を上げることは借地契約の目的に反するものではなく、転貸にはならない。

 万が一、地主が「無断転貸をしている。契約違反だから承諾料を払え」等と言ってきても文句を言われる筋合いは無い。拒否すればいい。

 但し、借地上の建物を第三者に売却する場合は、借地の無断譲渡または無断転貸の問題が起きるので注意したい。  

 

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【Q&A】 抵当権設定登記前に保存登記していた建物を取壊して再築した場合の対抗力

2005年07月05日 | 土地明渡(借地)

抵当権設定前に保存登記された建物を
  取壊して再築した場合、借地権を土地の買受人に対抗できるか

(問) 7年前、地主の建替えの承諾を得て借地上の木造建物を取壊し、鉄骨4階建ての建物へ建替え、登記も済ませた。勿論、木造建物の時も登記はしていた。ところが建替えの3年前に地主は土地に抵当権をつけていた。その抵当権が実行され、第三者が競落した。その買受人が借地の明渡しを要求している。明渡さなければならないのか。


(答) 「借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することが出来る。」(借地借家10条1項)と規定し、建物登記がある場合に、借地権に対抗力を認めた。これにより、土地所有者が代わっても、新所有者に対して自分の借地権を主張でき、明渡しを求められることはない。

 また、その登記した建物が焼失(滅失)した場合でも登記事項と再築の意思表示の掲示物を借地上の見やすい場所に掲示すれば、第三者に借地権の対抗力を維持できるとしている(借地借家10条2項)。

 それでは、土地の抵当権実行による競売手続き開始後、借地人が抵当権設定登記前に保存登記をしていた借地上の建物を取壊して再築した場合、借地権を土地の買受人に対抗することができるのか。

 今回の質問と殆ど同一の問題で争われた東京高裁の判決(2000(平成12)年5月11日 金融・商事判例198号27頁)がある。(同趣旨の判例、(東京高裁平成13年2月8日判決 判例タイムズ1058号272頁)

 東京高裁平成12年5月11日判決の要旨は
 「民事執行法は、土地の買受人が借地権を引き受けるかどうかを、その借地権が抵当権者に対抗することができるかどうかによって決定している。すなわち、不動産競売では、対抗問題は、抵当権の設定時に生じ、買受人が不動産を競落するときに生じるのではない。・・・・不動産競売における買受人の所有権葉の取得は、抵当権者の有する換価権の実現に過ぎず、新たな物権変動ではない。そのために、競売の時点での対抗問題は生じないのであって、競売による所有権取得の場合には、借地権を買受人が引き受けるかどうかは、抵当権者に対抗できるかどうかで定まるのであり、そのことを民事執行法59条2項が確認しているのである」と判示している。

即ち、①不動産競売において対抗問題が生じるのは、抵当権設定時であって、不動産競売の買受人への売却時ではない。従って、不動産の競落時における対抗要件の存在は必要ではない。

 そして、借地上建物の滅失と借地権の対抗に関しては、「抵当権設定登記が経由された時点において、土地の建物に所有権保存登記を経由していれば、借地人は借地権を抵当権者に対抗することができる。このようにして対抗力を取得した借地権は、その抵当権者との間では、その対抗力を維持するため、建物自体を維持したり、所有権保存登記を維持していなければならないわけではない。」と述べている。

 即ち、②抵当権に対する借地権の対抗要件があるかどうかは、抵当権設定時に登記があったか否かだけで定まる。従って、借地権は、抵当権設定時に既に建物保存登記があれば、その後に建物が滅失しても、また対抗要件である登記抹消されても、抵当権者・買受人に対抗できる。抵当権設定後の建物の存在や登記の存在は、抵当権に対する対抗力の存否とは無関係である。借地権の対抗力の有無は、競売時ではなく、抵当権設定時点で決定される。

 結論、質問者は木造建物を保存登記していたので、抵当権が設定された時点で借地権の対抗力がある。従って買受人の明渡し要求に応ずる必要はない。買受人を貸主として従前の契約内容で借地を続けることが出来る。

 従来の判例では、抵当権が設定された借地での建替えは大変危険なもので、後日、抵当権が実行された場合、借地人は、建物を取壊して明渡さざるをえない恐れがあった。事実1審の横浜地裁(平成8年3月11日判決)では、借地人に建物収去、土地明渡しを命じた。

 東京高裁の判決が確定したので、借地上建物の登記が抵当権設定前になされていれば、借地人は大幅な建物の増改築が安心して出来るということである。借地人にとっては刮目に値する重要な判決である。

 

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【Q&A】 新規入居者の方が家賃が安い、 家賃の値下げが出来ないか 

2005年07月04日 | 家賃の減額(増額)

    隣室の家賃は我家より2万円安いので、
       家賃の値下げを要求したいが

 (問) 15万円でマンションを賃貸し、2度更新しました。最近隣に入居した人の家賃は、広さ間取りも、内装のグレードも同じなのに13万円だと知り納得できません。今度の契約更新の際に家賃の減額を要求しようと思っています。


  (答) 現行家賃に納得がいかない場合、家主に対して家賃の減額を請求する手段はある。
 借地借家法32条に次のように規定している。
 「借主は、建物の税金・価格の減少、その他、経済事情の変動により、近隣家賃相場と比較して不相当になった時は、契約の条件に拘らず、家賃の減額を請求することが出来る」(32条1項の主旨)

 賃貸契約は家主と借主の一定の賃料で合意することで成立する。期間が経過し経済状況が変化すれば、継続家賃が近隣の家賃と比較して「不相当」になっているということは在り得る。その場合の、家賃の改定は、先ず当事者間の協議で決定するのが基本になる。

 しかし、家主が借主の減額要求に応じないで協議が調わなかった場合、借主は借地借家法32条に基づいて内容証明郵便で家賃減額の意思表示を明確にした上で、調停を申し立てる必要がある。調停で当事者間の合意が出来ない場合は裁判が必要になる。

 裁判になった場合は、適正家賃額を定めるための鑑定が必要となり、その費用として30~35万円(双方で分担)程度の経済的負担を覚悟しなければならない。

 係争となった場合、賃借人は減額請求をし、減額を正当とする裁判が確定するまで、従前の家賃を支払う必要がある。一方的に減額した家賃しか支払わないのは危険である。不足額の支払いを請求され、家賃の一部不履行による契約解除、建物明渡しを要求される恐れがある東京地裁1998年5月28日判決)。

 後日、裁判で減額が確定した場合、払い過ぎがあれば、減額請求した日まで遡って、その差額に1割の利息をつけて返還を求める事が出来る。(借地借家法32条3項)

 賃料減額請求は、請求者の意思表示が相手方に到達した日の分から、その効果が生ずる最高裁1970年5月6日判決)。

 減額請求の起算日を確定するためにも減額請求は、内容証明郵便で配達証明付にする必要がある。

 結論、家賃改定は当事者間の話合いで合意するのが基本である。

 

東京・台東借地借家人組合

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【Q&A】 住宅金融公庫の廃止で (2) (東京・台東)

2005年07月02日 | 増改築・改修・修繕(借地)

 (問) 住宅金融公庫の廃止は、借地人に何か影響があるのか。


 (答) 住宅金融公庫廃止で浮上したのは、借地権と担保の問題だ。住宅金融公庫は、原則的に借地上の建物に抵当(担保)権を設定する。しかし、地主が反対した場合、地主の承諾書を免除し、融資の道を拓いている。

 民間金融機関は借地人の建物を担保にすることに固執し、地主の承諾書を飽くまで要求するので地主が反対すれば借地人への融資の道は塞がれる。
 その結果、公庫が廃止されると借地人保護条項の借地借家法17条の借地非訟制度が空洞化されるという重大な問題へと繋がる。即ち、建築資金不足の借地人は、増改築制限特約があり、且つ地主が反対した場合、増改築出来ないという重大な問題が発生する。

 民間金融機関は地主の抵当権設定承諾書に拘泥する。だが、この借地人泣かせの地主の承諾書要求は単に民間金融機関の悪しき実務慣行でしかない。

 借地人は融資の担保として、①団体信用生命保険と②火災保険の質権設定を要求される。①と②は強制加入が義務付けられている。③保証協会の保証も要求される。借地人は担保のために多大な保険料と保証料を負担している。
 借地人に問題が起これば金融機関は①②③から保証され実害は無い。依って、建物を担保にする必要性は無い。単なる実務的慣行で行なわれているのだから廃止しても何ら実務的影響は無い筈だ。

 政府は公庫を廃止する前に先ず民間金融機関に対して、地主の抵当権設定承諾書を要求する悪しき実務慣行を即刻廃止する措置を講ずるか、地主が抵当権設定に反対した場合は、公庫並に地主の承諾書を免除する措置を金融機関に対して行政指導するのが筋である。

 借地人の権利確立を目指すのであれば、従来法務省が検討していた「借地権の担保化」を法的に具体化する。
 例えば、借地人の地主に対する借地権登記請求権を法的に認め、借地人の権利として明確化する。借地権登記を借地人が自由に行なえる権利とする。

 そうすれば、借地権に抵当権設定を―地主の承諾を得ずに―借地人の権利で自由に行なえる。これによって借地権の担保化が具体化する。増改築問題の懸案は解決するし、借地人の融資問題に道を拓くことになる。

 

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住宅金融公庫の廃止 で (1) (東京・台東)

2005年07月01日 | 増改築・改修・修繕(借地)

 住宅金融公庫を2007年4月1日に廃止する法案が2005年6月29日の参院本会議で自民・公明・民主の賛成多数(反対は共産・社民)で可決成立した。

 住宅金融公庫は2007年4月1日以降、新たに独立行政法人「住宅金融支援機構」として発足し、銀行などが融資した住宅ローン債権を買い取って証券化することが主な業務になる。住宅ローンを小口に証券化して市場で販売する支援業務が中心になり、公庫が実施してきた個人向け住宅への融資は原則的に廃止される。

   果して、住宅金融公庫が廃止されると借地人に悪影響が出るのか

 例えば、地主が借地人の増改築に飽くまで反対した場合、建築資金不足の借地人の増改築は事実上不可能になるという問題が発生する。理由は、民間金融機関は融資の条件として借地人の増改築建物に抵当権を設定し、その地主の承諾書を必ず要求する。地主は増改築に反対しているのであるから勿論、承諾書に判子を押さない。当然、地主の承諾書が無いので増改築の融資は打切られる。

 しかし、公庫は地主が反対して承諾が得られない時は、地主の承諾書を免除する措置がある。即ち、地主の抵当権設定承諾書が無くても公庫は、借地借家法17条による借地非訟手続きで裁判所の増改築の代諾許可の決定を得れば、現在はそれだけで建築資金の融資は受けられる。

 建築資金不足の借地人にとって、公庫廃止の影響は借地人保護条項である借地借家法17条の形骸化に繋がる。その結果、借地人は地主の地代値上げ・更新料・承諾料等の不当な要求に諾々と従わざるを得ない情況に追込まれる。

 だが、借地人泣かせの「地主の承諾書」要求は、法的根拠に基づくものではなく、単に民間金融機関の悪しき実務的慣行に過ぎないという事実は重大である。

 

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