本邦メディアはネガティブな側面ばかり伝える(?)から、つい、よくないことなのかな~と感じさせられてしまうかもしれませんが、いえいえ、これこそ、わが国にとっては待望の経済環境といえますよ・・・
こちらの記事等で論じた世界的な原油価格の下落ですが、このトレンド、さらに強まって、まさに異次元ゾーンに突入した感があります。そのあたりを象徴するのが、ご存じ、原油先物価格の「マイナス圏」入りです。
20日、NY原油先物市場では、WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート:アメリカの代表的指標油種)の5月物の清算値が1バレルでマイナス37ドル台と、前日から約56ドルも下がって、原油先物市場で価格が史上初のマイナスを記録しました。その意味は、買い手が売り手から原油だけではなく1バレル当たり37ドルを受け取る、ということで、通常の商取引では考えられない展開です。つまり、先物の売り手には、こうしておカネを支払ってでもいいから原油を引き取ってほしい、という切実な事情があったわけで・・・
それが、いろいろ報道されているように、原油の貯蔵余地がなくなってきた、ということになります。原油先物の売り手としては、先物で買っちゃったけれど、その保管スペースがなくなってきたので、これを現物で引き取ることはできない、なので、おカネ払うからだれか引き取ってくれ~・・・となって、当該5月物の取引終了日(21日)前日に先物売りが殺到し、上記のとおり価格が暴落した、という次第。
ということでこれ、米NY市場の、しかも5月先物という、かなり限定された場所とタイミングにおける特異な現象、とみることもできるかもしれません。しかしこれ、貯蔵タンク等が満杯になっちゃうよ~と売り手がネを上げるほど、原油の需要量に対して生産・供給量が過大になっていることに本質的な原因があるといえるでしょう。そのあたりは先日のこちらの記事に書いたとおりで、米シェールオイル革命の進展等により、少し前から原油の供給が世界的に増加し、その需給がユルんでいたところ、新型コロナウイルス感染拡大にともなうグローバル経済の減速でその需要が大きく減少する見通しとなったため、差し引きの余剰感がますます高まった、といったあたりでしょう。ということは上記のマイナス価格、けっして一時的なものなどではなく・・・
足元のWTI価格ですが、今週(27日)の始値は6月限で1バレル16.84ドル、11月限で同27.62ドルなどとなっています。これを見ると投資家らはこの先、原油価格は急速に回復していく、と読んでいるみたい(っても、これら価格は依然として年初の1/3程度にとどまっていますが)。ですが、上記のように、原油の供給過剰はもはや構造的なもの。したがって、今月20日に起こったことが、かなり高い確率で来月20日近くに再び繰り返されると予想されますが・・・