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【Gexit(独のEU離脱)はあり得るか】「金融」が阻む欧州統合の夢⑤

2016-07-03 00:01:55 | ヨーロッパ

前回からの続き)

 統合も進まないし、かといって離脱もできない―――そんな煉獄みたいな状態に陥ったユーロ圏諸国をつなぎとめる唯一の策が、前述した量的緩和QE)という名の欧州中央銀行(ECB)による金融政策になります。

 しかし・・・これが一時しのぎの手に過ぎないことは明白です。その理由を簡潔にまとめると、ECBはその立場上、相反するユーロ諸国の要求に対して中間的なスタンスを取らざるを得ないため、その政策すなわちQEの内容が「どっちつかず」になる―――ドイツ等にとっては過剰となり、その他の国にとっては過小になるということです。実際にECBは、QEの実行に当たって各国の出資割合(キャピタル・キー)に応じて債券を買い入れるというルールを適用しており、「QEを必要とする国の国債だけを買う」みたいな一部の国だけを優遇するようなことはしていません(あくまでも、いまのところは、ですが・・・)。

 ギリシャスペインイタリアなどの国々はどこも不動産バブル崩壊後の経済低迷にあえいでおり、必然的に(放漫?)財政政策への期待が高まるため、国債を買い取って財政資金を提供してくれるQEは本来、たいへんありがたい政策ですが、上記事情から彼らはいまのQEでは必要十分なおカネを得ることができません。そんななかでEU本部からは年金額引き下げなどの厳しい緊縮策の実行が求められるわけです。これでは自分たちが望む質量をともなう財政出動ができないため、経済回復はままならず、国民の反EU感情は高まるばかり・・・

 いっぽうのドイツ等にとってはQEなんてまったく不要です(実際に当初ドイツはECBのQE発動に反対した)。ECBに頼らずとも財政資金は自力(徴税&国債発行)で調達できるわけですから。まあ同じユーロ圏に属する他国への配慮から、QE実行にはしぶしぶ同意はするけれど、債務国の財政規律を緩めかねないから、あんまり派手にやるなよ!といったところでしょう。

 ということで頼みのQEは中途半端なスケールにとどまり、双方(QEいらない側、QEもっとほしい側)のフラストレーションは高まるばかり・・・というのが現時点でのEU圏の状況。一見、落ち着いているようで実は爆発寸前なわけです(?)。

 そんなユーロ諸国、そしてECBやQEのこの先はいったいどうなる?・・・ですが、以前の記事「通貨ユーロはどのみち崩壊へ向かう?」の回目に書いた方向と考えます。すなわち自分以外のすべての国がECBの実質的な財政ファイナンスにどっぷりとつかってしまう事態(=ユーロ乱発による激しいインフレ)に危機感を募らせたドイツが、ついに「Gexit」―――EU離脱を決断する・・・。ドイツだけはこれができますからね。なぜならその独自通貨(マルク?)は唯一、ユーロよりも強い通貨になるから・・・

 ・・・と一瞬、思ったが、やっぱり無理かな、Gexitも。そんなことをしたら今度はドイツの各銀行が抱えるユーロ建ての資産価額が暴落し、各行は破綻のふちに追い詰められますからね。で結局、ドイツ当局もまた自国の金融システム救済のために巨額財政負担を強いられる。さすがのドイツもこのリスクを背負いたくはないはず・・・。なのでドイツは、Gexitを断念するかわりに、ユーロ圏の破滅的な財政ファイナンスを阻止するべく、ECBに対して、キャピタル・キーに基づくQEの現行ルール絶対順守を引き続き要求し続けるでしょう。でもそれではQEの規模は上記のとおり中途半端なままだから他国のイライラは増す一方・・・。で上記「爆発寸前」状態はいよいよ臨界へ・・・?

 ・・・みたいに考えていくと、やはり欧州の未来はカオス―――少なくとも「統合」のほうは「金融」がネックとなって、進むことはない―――そう判断せざるを得ないわけです・・・

続く

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