本当にたいへんな情勢下にあるのはよく分かりますが、ではどうすればよいのか?・・・って、少なくとも、いまのままではどうしようもない、とは言えるでしょうかね・・・
ご存知のとおり、新型コロナウイルス感染拡大の影響で欧州、とりわけ感染者数そして死者数が世界ワーストクラスのイタリア、スペイン、フランス等を含む欧州連合(EU)の経済が非常に厳しい状況に陥っています。これに対処するべく、先月あたりから、EU圏では、各国首脳そして欧州中央銀行(ECB)などが、雇用維持や企業の資金繰り支援等の政策に必要な資金をどう手当てするか、等について、何度も協議を重ねているところです。しかし、大枠では合意ができても、それを具体的にどのような枠組みで実践していくか、などは一向にまとまっていない印象です。
そのあたり、先日、EUは財務相会合で総額5400億ユーロという大型の経済対策で合意はしています。このスキームのなかにはEU圏の金融セイフティーネットである欧州安定メカニズム(ESM)の活用の決定が含まれ、これによって各国はESMにGDPの2%までの融資を申請できることになりました。まあこのへんは妥当なところ・・・というか、基準が同じだから?EUの全加盟国が何とか合意できるぎりぎりのライン、といった感じでしょうか。
問題はその先です。すなわち、同じEU圏でも、コロナ対策が相対的に手厚くできるところとそうでないところ、言い換えると、経済力(≒[ESM融資金等の]返済能力)が強い国とそうでない国がある中で、前者と後者とがどう協力等をするのか、についての折り合いがなかなかつかない、ということ。EUでこの種の議論があるときは毎回必ず引っかかってしまうところですが、これ、こちらの記事等で書いたEUの構造的な矛盾―――本来、金融と財政は一体不可分であるべきなのに、EUでは金融(ECB・共通通貨ユーロ)は統合したのに財政は不統合で各国バラバラ―――に根差しているので、これを解消しなければ、どうしても上記両者間の対立が生じるから、さんざん議論しても、最低限の合意しかできません。その結果、どの国も他国に対してイラっとしてしまうわけで・・・
今回の場合、頼れるのがESM、それもGDP2%分までのアクセスしかできないといったあたりが、EU内で経済力が強いとは言えない国々にとっては大いに不満のはず。この点を含め、ESMのおカネは、借りるに当たっては(対GDP債務上限など)守らなくてはならないルール等があるので、こうした国々にとって使い勝手がいいわけではありません。そこで?今回「コロナ債」なるEU圏の共同債構想が出てきたわけですが・・・