ここのところ連日のように日本以外の(?)世界中の政治家や投資家をハラハラドキドキさせてくれる欧州の小国・ギリシャ。この国を見ていると、つくづく金(ゴールド)って個人にとっても国家にとっても大切なのだな~と痛感させられます。本稿ではこのあたりで考えるところを綴ってみたいと思います。
まずはギリシャの一個人の立場からみた金のありがたさについて。
ご存知のとおり、現在、新たな支援策をめぐってギリシャはユーロ圏諸国と厳しい交渉を行っている最中です。で、大多数の同国民からすれば、様々な面で債権国を相手に戦っているチプラス現政権を応援したいところでしょう。
しかし、その一方で人々は冷静に自身の資産を守るための行動を起こさなければなりません。さもないと彼ら彼女らの「ユーロ」預金の価値が強制的に切り下げられて多大な損害を被る可能性が高いからです。もしも上記交渉が決裂し、融資金の供給が断たれてギリシャがデフォルトと「Grexit」つまりユーロ圏からの退出に追い込まれたら、同国債を大量に抱えたギリシャの銀行は預金の払い戻しができなくなるため、当局は預金封鎖を断行せざるを得なくなります。とはいえ、いつまでも閉店を続けられるはずはなく、遅かれ早かれ銀行は窓口を開いて何らかの「おカネらしきもの」を預金者に渡さないとなりません。で、そのとき支払われるのはユーロではなく、おそらくはユーロ札に「D」のスタンプが押された(?)以前の通貨「ドラクマ」札・・・。
その対ユーロの交換比率がどうなるのか見当はつきませんが、オフィシャルは1:1でも、実勢レートの大幅な下落は間違いないでしょう。おそらくは1ドラクマが0.5ユーロ以下、つまり50%以上の暴落なのではないかと・・・。かくしてギリシャの銀行におカネを預けている人は国家のデフォルト前後でその半分(以上)を失うことに・・・。
なので、いくら政府には「少しでも対外債務が減らせるようがんばってほしい!」と願いつつも、こうしたヤバい事態が十分に想定される以上、ギリシャ市民としては預金を早めに現金に換えておきたいところです。いまギリシャで起きている預金流出(実質的な「bank run(取り付け)」)にはそんな預金者として当然の行動原理が反映されていると思っています。
しかし・・・いくら預金封鎖の前に手元にユーロ紙幣を集めておいても、「これで一安心」とはいかないでしょう。たぶんギリシャ当局は国内にあるユーロの流通を大きく制限するとともに、そのドラクマへの公定レートでの交換を強いると予想されるから。まあヤミの両替商に行けば実効レートに近い額のドラクマを手にすることはできるかもしれませんが、それらはあくまでも非合法なので当局の取り締まりがコワいわけで・・・。
ならば、ギリシャ以外の外国の銀行に預貯金しよう!という手が考えられます。たしかにこれなら同国の追及等が及びにくいし、富裕層を中心に実際にそうしている人々が多くなっていると聞きます。でもこれにしたって100%逃げ切りとはいえないでしょう。「Grexit」の際は、これらギリシャ人預金者の「ユーロ」をどう扱うかが同国とそれら銀行の所在国とのあいだで大問題となり、結局は何らかのペナルティ等が科せられるリスクがゼロとはいえないからです。
こうしたことをあれこれ想像すると、ギリシャの人々にとって、母国が破綻した後も「ユーロ」の現金や預貯金を持ち続けながら資産の保全を図ることはなかなか難しそうだ―――そんな気がしています。