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【「コロナ債」実現可能性が低い理由】金融財政、統合かバラバラか:コロナ禍で決断を迫られるEU②

2020-04-13 09:00:09 | ヨーロッパ

前回からの続き)

 新型コロナウイルスの感染拡大で欧州連合(EU)加盟国、なかでもイタリア、スペイン、フランスといった国々は非常に厳しい経済情勢下にあるわけですが、これに向けた対策(雇用維持とか企業の資金繰り支援など)に必要な財政資金は、通常は新規の国債を発行して集めるべきところ、いまのマーケット環境では低コストでの調達が難しくなっています。となると、さらにおカネが必要なところは、EUの金融セイフティーネットである欧州安定メカニズムESM)に融資を申請する、ということになりそうですが、それには財政運営目標等に関する約束を守らなければならず、敷居が高過ぎて・・・

 ・・・となって出てきたのが、「コロナ債」なる構想です。これ、実質的に、以前からEU内で取り沙汰されてきたスキームであるユーロ共同債といえるもの。ぶっちゃけ、あれこれ条件を付けられるESMマネーはイヤだから、EU共通の債券を振り出して集めたおカネを使えるようにしようよ、いまはコロナ禍の非常事態時なのだからアリでしょ?といったあたりでしょうか・・・

 で、この構想、先月25日、市場での資金調達のために債務共通化の仕組みを設ける必要があると訴える共同書簡によって明らかになったものですが、これに加わった国がイタリアフランス、スペイン、ポルトガル、アイルランド、ベルギー、ルクセンブルク、スロベニア、ギリシャの9か国。他方、これに反対し、ESMを活用するべきだ、との姿勢を堅持しているのがドイツ、オランダ、オーストリア、フィンランドなどといった国々。コロナ債については現時点まで長々と議論されているみたいですが、どちらかが歩み寄って・・・みたいな動きは見られないようです。

 上記コロナ債・・・のようなEU共通の債券の構想が、まず実現することはないだろう、ということは、本ブログで何度も登場させているEU加盟国の国債価格(利回り)の序列を示す不等式「独>蘭>仏>西>伊>・・・>ギリシャ」をみれば分かるというものです。以前から指摘しているように、そして本稿タイトルのとおり、EU圏は通貨金融統合・財政不統合なので、同じタイミング・同じ年限で発行された国債でも、発行国の財政状態(≒支払い能力)等が反映されるために、たとえばドイツのものとギリシャのものとでは価格や利回りが大きく異なってしまいます(当然、ドイツ国債は高価格低利回り、ギリシャ国債は低価格高利回り)。で、その中間付近にある国が、フランスあたり、といった具合になります。

 そういうわけで、ここでコロナ禍を大義名分としたEU共通債が発行されるとなると、その価格・利回りはおおむねフランス国債あたりになる(?)ものと思われます。それが上記不等式においてフランスより下位に当たるスペインやイタリア等、そして上位に当たるドイツやオランダ等にとって意味することは・・・前者にとってはトク(自力で国債を発行するよりも調達コストが安くすむ)で、後者にとってはソン(自力で国債を発行するよりも同コストが高くなる)ことになります。よってコロナ債を提案する側は、上記不等式で自分たちよりも上位にある国を起債の仲間に入れなければなりません。そうした国に該当するドイツやオランダ等は余計な(金利)負担が生じるので、自国納税者の手前、この構想に賛成できるわけはありません。かくして、この手の共同債が実現する可能性は極めて低くなってしまいます。もっとも上記9か国だけで発行、という手はありそう・・・って、やはりないでしょうね、その中で最上位にあたるフランスが(ソンするので)今度は反対に回るでしょうから・・・

(続く)

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