(前回からの続き)
6日、正式に発足したイタリア新内閣のコンテ首相が、国民に対して急進的な変革をもたらすと述べるいっぽうで、ユーロ離脱は「一度も考えたことがない」と明確に否定したのは、前回綴った理由からすれば当然です。つまりユーロ圏の国債序列を示す不等式(上位ほど債務支払い能力が高く、下位ほど低い)「独>蘭>仏>西>伊>・・・>ギリシャ」で下位のイタリアが共通通貨ユーロを捨てて独自通貨に回帰したら、たちまち同国は大量のユーロ建て借金の支払いに窮してデフォルトに追い込まれ、国民生活はハイパーインフレで破壊されるわけです。よってユーロ離脱は同国にとって自殺行為以外の何ものでもなく、そんな暴挙、イタリアのトップが誰になろうと絶対に選択されることはないでしょう。
いっぽうでコンテ首相は、連立与党のポピュリスト「五つ星」の主張である最低所得保障(ユニバーサル・ベーシックインカム)の導入を明言しました。これ、失業者らに最低月額780ユーロ(!?)を給付しようというもののようですが、その財源を確保するための増税等はしないようです。ということはおそらく・・・いま以上に財政赤字を拡大させる(新規に国債を振り出す)しかないでしょう。しかし、イタリアのGDPに対する同赤字の割合は約130%と、ユーロ圏の目安である60%をすでに大きく上回っています。よってこれがユーロの仲間内で認められるはずはなく、したがって(いくらマリオ・ドラギ現総裁がイタリア人とはいっても)ECBがキャピタル・キーの縛りを逸脱して伊国債等の追加購入に応じるはずもないでしょう。それでもコンテ政権が本政策を強行したら、買い手が十分につかないために国債価格は急落、金利が急騰してイタリア経済は破綻しかねません・・・
といった具合で、どうやら五つ星の目玉政策も実施は不可能に近いと思われます。となると残るは他の連立政党「同盟」の不法移民受け入れ拒否だけになります・・・が、これまたイタリア単独での実行は難しいはずです。ユーロ圏の共通ルールであるシェンゲン協定(域内の人やモノの自由な移動に関する協定)に抵触してしまうためです。それでもやる気なら、英国がBrexitを決めたように、イタリアも自分からユーロ圏を出ていくしかありません・・・が、それは考えたことすらない、というのなら、この政策も結局、実行には移せないことに・・・
こうしてイタリアの新政権が公約として掲げた急進的変革はどれも掛け声倒れに終わり、これらの実現を期待して五つ星や同盟に投票した人々は大いに失望するでしょう(?)。その結果、かの国では政治に対する不信感とか、先述不等式「独>蘭>仏>西>伊>・・・>ギリシャ」の自国よりも上位の国々に対する逆恨み(?)の感情がいっそう高まるおそれがありそうです・・・