(前回からの続き)
ここまで書いたことから判断すると、欧州中央銀行(ECB)は今後も量的緩和策(QE)を続けるしかないと考えられます。でも・・・そうなると先述したリスク、とくにドイツやオランダなどで顕在化している住宅バブルがますます過熱し、これら国々の経済や金融システムに悪影響が及ぶのは必至でしょう。ご紹介の下記グラフを見ても、まあ・・・そうなっちゃうだろうな~ってことは容易に想像がつくところです。
他方で、いくら継続するといっても現状のQEの規模では・・・イタリアとかギリシャにとってはまだまだ不十分といえます。そのためECBにはもっと派手に緩和マネーをばらまいてもらわないと・・・といったあたりが彼らの胸の内でしょう(?)。
よって、もっとも望ましいQEの仕方は・・・ドイツやオランダのような国々の債券購入は手控える一方、イタリアやギリシャなどの債券はもっと多く買い入れる、というものになります(?)。これだと、前者の長期金利は適度に上がってバブル抑制が図れるうえ、後者では長期金利がいまよりも下がることで不動産投資が活性化し、景気が上向くほか、住宅価格も値上がりして待望の資産効果がもたらされるに違いありません(?)。いまのECBは本心ではこれをしたいところでしょう(?)。現ECB総裁マリオ・ドラギ氏は・・・イタリア人ですからね・・・
しかし、残念ながら(?)ECBにはこれが実際にはできません。このやり方だとイタリアとかギリシャみたいな重債務国の国債ばかりを買い上げることになり、ECBが彼らに対して実質的な財政ファイナンス(中銀による国債の直接引き受け)を施すかたちになってしまうからです。このときこれら諸国は、ECBが買い支えてくれることをいいことに、次々に国債を振り出して放漫財政に走るに違いありません(?)。こんなこと、欧州債権国とりわけドイツには絶対に受け入れられないでしょう。これが共通通貨ユーロの大量発行すなわち激しいインフレにつながりかねないためです。
そんな収拾不可能な事態に陥ることのないよう、ECBはQEの実行に当たっては各国のECB出資比率(キャピタル・キー:capital key)に応じて債券を買い入れるようにしています。上記リスクを勘案すれば当然のルールではあります・・・が、これですと先述した各国の欲求不満が解消されることはけっしてない―――最大出資国ドイツはもっとも多く債券が買われるので金利が低くなり過ぎてバブルが膨張を続け、かたや同比率の低い国々では十分に下がらないので資産デフレが止まらない―――わけです・・・
このように考えてくるとやはりECBには、ユーロ圏各国をそれぞれの苦境から脱出させる手がないということになってしまいますね・・・(?)