1月25日(木)に市内のクリニックからの紹介で86歳女性が受診した。食欲不振があり全体に衰弱しているという内容だった。実際に来て見ると事情は違っていた。
市の福祉サービスの方たちが連れてきた。娘と二人暮らしだが、介護放棄に近く虐待の可能性もあるという。今回母子を分離して、患者さんは施設入所に持っていきたいという話だった。自宅はいわゆるごみ屋敷になっているそうで、写真をみせてもらった。
しかしそういう話も一面でしかないようだ。娘さんに会ったが、介護放棄というよりも、どうしていいかわからないのではないか(理解力が低い?)。
患者さんは小柄でやせていた。会話はできて(頭部CTの著明な脳委縮があったが)、喋り方からみておそらく目の前に食事があれば食べられる。
問題は発熱があり、肺病変があることだった。(紹介状には発熱の話はなく、連れてきた介護の人も認識していなかった)両側肺野にまず気管支拡張像があり、限局性の浸潤影・斑状・粒状影が多発している。
当院には2014年に左橈骨尺骨開放骨折で整形外科に入院していた。その時に入院時検査として胸部単純X線が撮影されている。両側肺に陰影があり、内科でみればCTで精査となるが、整形外科医は気にしていなかったようだ。
紹介状に「細気管支炎・肺サルコイドーシスの疑いで経過観察」の記載があった。クリニックでつける病名ではないので、どこかに紹介しているのだろう。
問い合わせると、地域の基幹病院呼吸器内科に2020年に肺陰影精査で紹介していた。2021年まで通院して、その病名で終診となっていた。たぶんその見立ては違う。
ちょうど受診日は、呼吸器外来があったので、相談した。画像をみて、第一印象は「非結核性抗酸菌症NTMではないでしょうか」といわれた。それそれ、という感じだ。
ただ喀痰採取は難しそうだ。胃液採取?になるか。NTMだと胃液採取はどうかと思うが、結核との鑑別のためにも必要になるかもしれない。
発熱と結構な炎症反応上昇があった(白血球24100・CRP11.3)。他の病変の影響下かもしれない。尿路感染症の可能性は低かった。仙骨部と両側転子部の軽度の褥瘡などもあるが、それでは炎症として弱いか。
あとはNTMがあるとして、細菌性肺炎の併発だが、画像からは区別し難い。呼吸器外来の先生との相談で、まずはスルバシリン(ABPC/SBT)で治療を開始することになった。(血液培養2セット尿培養は提出)
それにしても、いかにも当院向きの患者さんだと思われた。