1月5日、1月14日に記載した79歳男性のその後。COVID-19による肺炎だが、隔離期間を過ぎても遷延・増悪していた。デキサメサゾンを1月12日から初期量に戻したが、どうなることかという状態だった。
1月14日(日)に血便が中等量出た。病棟から連絡が入り、バイタルは変化がなかったので、止血剤の点滴静注を行った。
翌日15日に看護師さんの撮影した血便の写真を見ると、便が赤黒色で、下部消化管出血で間違いなかった。採血では貧血の進行はなかった(Hb値は前回と同じ)。腹痛の訴えはなかったが、虚血性腸炎を疑った。
その後は普通便の表面に血便がわずかに付着するくらいになり、治まっていくと判断していた。ところが18日にまた同様の血便が中等量あった。
19日に大学病院から内視鏡検査に来てもらっている先生に相談して、グリセリン浣腸の前処置で直腸~S状結腸を確認してもらうことにした。上手な先生なので、便が残っていてもさらに深部まで診てくれるかもしれないという期待もあった。
内視鏡を挿入すると、直腸に浅い潰瘍面が散在していて、そのうちのひとつは1/4周くらいだった。潰瘍面に突出はないが、黒色の血管が複数あった。さらにS状結腸から口側に進んで、残便をかき分けて盲腸まで観察してくれた。
直腸潰瘍の他には小ポリープがあるだけだった。便秘による直腸潰瘍による出血として、潰瘍面の血管を凝固止血してくれた。
肺炎は解熱して、炎症反応が改善した。胸部CT再検で間質性陰影が軽減し始めていた。1月18日に呼吸器外来に来ている先生に診てもらって、デキサメサゾンの漸減は慎重に1週間ずつ行うことになった。(8mg=6.6mg/日から6mg=4.95mg/日)
認知症(のBPSD)だけでも大変だが、肺炎と消化管出血と、糖尿病のステロイド投与による悪化(インスリン強化療法、点滴への混合など)もあり、対応が難しい。