なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

「せん妄予防のコツ」

2017年10月07日 | Weblog

「せん妄予防のコツ 静岡がんセンターの実践」(編著)松本晃明 星和書店刊

 せん妄の分類(1)

 過活動型せん妄、低活動型せん妄、混合型せん妄に分類される。かつては「せん妄」といえば、見当識障害・錯覚・幻覚・妄想・興奮などを呈する「過活動型せん妄」を指していた。ボーッとしていて反応に乏しい(不穏状態にはない)「低活動型せん妄」もせん妄ととらえる。

 せん妄の背景

 1)意識障害をきたしうる身体疾患、2)医薬品誘発せん妄、3)環境因子

 せん妄の分類(2)

 1)「医薬品誘発性せん妄」 オピオイド、ステロイド、ベンゾジアゼピン系等睡眠薬・抗不安薬。

 2)「物質離脱せん妄」 アルコール、ベンゾジアゼピン系等睡眠薬・抗不安薬

 ベンゾジアゼピン系はハルシオン、デパス、レンドルミン。非ベンゾジアゼピン系はマイスリー、アモバン。いずれもGABAA受容体に作用して同じような効果を発揮する。ベンゾジアゼピン系と非ベンゾジアゼピン系は「ベンゾジアゼピン受容体作動薬」とひとまとめにできる。まとめてベンゾジアゼピン系等」と表現。

 

睡眠マネジメント

 1.せん妄ハイリスクの高齢入院患者の不眠時指示は、せん妄抑制系の鎮静系抗うつ薬(テトラミド、デジレル)を使用する。

 鎮静系抗うつ薬
 1)テトラミド10mg1錠を内服
 2)翌朝眠気が残る時、デジレル25mg1錠に切り替え
 3)テトラミド10mg1錠であまり眠れなかった時、テトラミド10mg2錠に切り替え
 定期薬使用も可能だが、最近は新型睡眠薬(ロゼレム、ベルソムラ)を優先して、鎮静系抗うつ薬は不眠時指示する。
 
 2.せん妄ハイリスクの高齢入院患者の睡眠薬の定期内服は、「夕食後ロゼレム、就寝前ベルソムラ」内服を基本とする
 
 新型睡眠薬(ロゼレム、ベルソムラ)
 1)ロゼレム8mg1錠
   メラトニン受容体作動薬(睡眠のリズム) 効果は弱い 
   速効性はない 効果発現に時間がかかる
   せん妄抑制効果あり 
 2)ベルソムラ15mg1錠
   オレキシン受容体(覚醒の調整)拮抗薬
   速効性あり 
   せん妄抑制効果あり(ロゼレムをはるかに凌ぐ)
  
 3.入院前からベンゾジアゼピン系等睡眠薬を長期連用している(依存)患者への対応
 
  ロゼレム・ベルソムラに切り替えても、従来の(ベンゾジアゼピン系等)睡眠薬中止による離脱症状(副作用)で元の睡眠薬に戻してしまう。また  
  従来の睡眠薬を身体的な理由から内服困難になり、離脱せん妄が出現する。
 
  セレネース(単独)点滴は、ベンゾジアゼピン系等睡眠薬による「離脱せん妄」には効果不十分(ベンゾジアゼピン系等薬剤の禁断症状だから)。
  
  ロゼレム、ベルソムラ内服(内服できる時)を行い、離脱せん妄が生じた時は、生食100ml+ロヒプノール2mg1A+セレネース5mg1(100ml/時 入眠したらストップ。
 
 
 
 

 

 

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