なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

心嚢液貯留・胸水貯留

2016年02月24日 | Weblog

 昨日の当直帯で内科クリニックから急性心不全疑いで80歳代の女性が紹介された。当直は外科医だった。白血球数10100・CRP25と上昇していた。自宅に電話がきて、その時の話では尿路感染症疑いという話だった。呼吸苦もあってという。肺炎ですかと訊くと、肺炎ではないようだが、胸水があると言われた。。一昨日から内科クリニックで抗菌薬(ファーストシン点滴静注とクラビット内服)を2日間投与したが、発熱が続いて改善していないというので、大腸菌ESBLのような抗菌薬の効きにくい急性腎盂腎炎かと思った。血圧は安定して、酸素飽和度が90%(室内気)というこだった。チエナムの点滴静注・ラシックス1A静注・点滴40ml/時で入院させてもらうことにした。

 患者さんは意識清明で、認知力障害はなく、しっかり会話できた。毎年当院の健診センターで健診を受けていて、昨年の胸部X線はまったく異常がない。1ケ月前から何となく寒気がしていた(これを最初の症状としていいのか)。1週間前から胸痛(激痛ではない)があり、5日前に内科クリニックを受診した。胸部X線で心拡大があったが、経過をみたらしい。一昨日に発熱(37℃台で最高は37.7℃)があり、抗菌薬の投与を2日行ったが、昨日は胸部X線で心拡大が進行して胸水貯留も出て、患者さんも呼吸苦を訴えたために、当院搬送としたのだった。

 今日胸部X線・胸腹部CT(単純)を確認した。心嚢液が貯留している。両側胸水が貯留しているが、左が目立った。上行大動脈が少し太く見えて、内腔に線状の陰影があるようでもある。症状が突発ではないが、急性大動脈解離を疑った。循環器科医(二人のうちのひとり。もうひとりは感染症のセミナーで不在)に相談して、まず造影CTを行うことにした。結果は、大動脈解離はなかった。

 心嚢液貯留は昨夜より増量して、両側胸水も増量していた。血圧140/60mmHgで酸素飽和度は酸素3L/分で94%。心電図は異常なしで、心原性酵素も正常域だった。いったいこれは何だろう。病状としては心不全になっている。結核以外の細菌感染症で心膜炎・胸膜炎は考えにくい。肺癌の進行や悪性リンパ腫なら、胸水・心嚢液貯留はありうるか。ウイルス性心筋炎は酵素からみてないだろう。感冒様症状が先行してウイルス性心膜炎なのか。検査としては胸腔穿刺・心嚢穿刺から調べていくべきなのだろう。

 自分が担当して診断治療できそうになかった。循環器科医も送ってくれということで、心血管センターのある専門病院にお願いする手配をして、救急搬送した。

(追記)

 翌日の2月25日に感染症のセミナーから帰ってきた、もう一人の若い循環器科医に画像を見てもらった。感冒様症状が先行して発症しているし、急性(ウイルス性)心膜炎じゃないですか、とあっさり言われた。心原性酵素が上昇していないし、心筋炎がなくて心膜炎だけだと画像の割に重症感がないのでは、とも言われた。患者さんはもともと元気な人のようだが、ベットサイドで話をした時もはきはき答えていた。造影検査の同意書にサインできますが、と言うとガバッと起き上がった。画像の割に元気だった。急性(ウイルス性)心膜炎からうっ血性心不全を呈し、治療としては心不全の管理をしながら(NSAIDで?)経過をみれば治っていくのだろうか。ちなみに紹介状の病名には、急性心不全・急性心膜炎の疑いと記載していた。結果的にそこだけは正解になるかもしれない。何だかわからなくて、慌てて騒いだというのが実態だが。

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