なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

藤村茂先生講演会

2016年02月09日 | Weblog

 今日は東北薬科大学薬学部臨床感染症学教室の藤村茂教授を招いて、院内の感染管理の学術講演会があった(ICNまかせの名前だけの感染管理室長として座長をした)。テーマはインフルエンザウイルスとノロウイルス。

 インフルエンザではタミフル耐性の話をされた。A型H1N1はH274Y変異、H3N2はR292K変異でタミフル耐性となる。2013~2014年シーズンのH1N1で5%、2014~2015年シーズンのH3N2で1%のタミフル耐性があった。ただ耐性といっても、細菌感染の耐性とは異なり、IC50の値が高くなるが、まったく効かないということではない。尿中に含まれるタミフルの代謝物が環境水に混じると(タミフル負荷)、その環境にいるトリでタミフル耐性が生じる。タミフル耐性ウイルスでも、リレンザ・イナビルは効果がある。タミフルの予防投与(半量)では有効血中濃度に達しないので、効果がない。予防投与としてはイナビル半量がいいそうだ。

 インフルエンザウイルス感染後の併発症としても肺炎の話もされた。肺炎の起炎菌は、肺炎球菌が多いが、喀痰検査だと起炎菌不明の比率が高い。遺伝子まで検査すると、口腔内細菌・嫌気性菌が多いということだった。

 その後、カルバペネム系の話になり、多くの病院ではメロペネムがジェネリックになっているが、製造元は中国かインドで、電子顕微鏡でみるとオリジナルに比べて粒子がかなり荒くなっていて、それは溶解しにくさにつながるという。また夾雑物が入っていて、どう作用するかわからない。東北大学病院ではその点を考慮して、メロペネムはオリジナルを使用して、ジェネリックに変えていない。なぜなら、メロペネムは生きるか死ぬかのクリティカルな状況で使用されるから。ドリペンネム(フィニバックス)は10年経過したが、ジェネリックとして製造するのが困難で、オリジナルのみが出ている。フィニバックスをというのは、シオノギが共催だから。口腔内細菌・嫌気性菌の肺炎はカルバペネムを使用しなくても治療できる。それにしても、ジェネリックはオリジナルとは違うというのは印象深い話だった。

 ノロウイルスは10~100個のレベルで感染が起こり、それほど少ない量で発症するのは、赤痢とO-157くらいだという。サルモネラなどは大量の菌が入らないと発症しない。Noro genogroupⅠはカキからの感染なので、食べた人だけの小規模な流行にとどまる。Noro genogroupⅡは糞便からヒト-ヒト感染で大規模に広がる。ノロウイルスは赤血球のA・B・ルイスbの抗原に結合する(ルイスbは血液型と関係なく日本人の7割か有している)。ノロウイルスはエンペロープを有しないので、アルコール系消毒薬が効かないとされているが、それは培養できないノロウイルスの代わりに実験に使用するネコカリシウイルスの話だという。アルコールはノロウイルスを殺菌できるので、ハンドソープで手洗いして流水ですすいだ後に、アルコール系消毒薬を使用すれば感染を防止できる。

 ルビスタというノロウイルス吐物処理キットが市販されているので、病院のように処理できないクリニックでそろえておけば、患者さんが嘔吐しても慌てずに済むという。

 環境感染症学会での話を先取りしたことになりますと言われた。確かに、学会で講演される先生なので、それを病院でいながらにして聴けたことになる。

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