Snowtree わたしの頭蓋骨の下 *鑑賞記録*

舞台は生もの、賞賛も不満もその日の出来次第、観客側のその日の気分次第。感想というものは単なる個人の私感でしかありません。

歌舞伎座『秀山祭九月大歌舞伎 夜の部』 1等1階席前方上手寄り

2007年09月22日 | 歌舞伎
歌舞伎座『秀山祭九月大歌舞伎 夜の部』 1等1階席前方上手寄り

『阿古屋』
大舞台ですね。吉右衛門さん、段四郎さんがいることで舞台が大きくなっています。吉右衛門さんの情のある重忠。段四郎さんの憎めない岩永。

そこに玉三郎さんの渾身の阿古屋がいるんですから大きくならないわけがない。玉様は微細に渡って計算しつくされた動きをしていますね。近くでみると文楽の人形を相当意識しているのがわかります。演奏しているときに顔の動きの間合いがちょっと独特。何かが以前と違うと思ったのはここの部分かな。

この三人の大御所のなかに入る榛沢の染五郎さんは控えめにしてても華がありました。

『身替座禅』
団十郎さん、ますます酔っ払い右京(笑)んで、まあ羽目物からは相当ずれてるんですけど、許せちゃう。団十郎さんのこういう役は好きなんですよね、私。

左團次さんの玉の井はやはり可愛気がないですねえ。もう少しふんわりした可愛げな部分があるといいなあ。でも奥方らしい品はありました。

染五郎さんの太郎冠者が一番羽目物のなかの人物でした。今回、羽目物からずれてるカップルのなかで一人上品にやっているので、なんとなくアンバランスな感じも受けますが飄々とした雰囲気で可愛らしいです。語る部分はしっかり軽妙に踊っていました。最近、こういう踊りに表情が出てきたと思います。

千枝&小枝がやはり良いです。実のところ今回のこの舞台を支えています。さすがはベテラン。それに二人ともとっても可愛いと思う。

『二条城の清正』
前回同様、やっぱり話には乗りきれませんでした。清正にどうしても思い入れができなくて。ただ、役者さんたちは皆しっかり仕事をしていたし、その部分では前回よりかなり楽しみました。

吉右衛門さんのラストの熱演が凄かった。たっぷり台詞を謳いあげていました。贔屓ならたまらない一幕でしょう。

二幕目の福助さんは超、美しい公達で惚れ惚れでしたが三幕目は幼すぎかと。二幕目の感じのままでいいと思う。

芝雀さんが前回よりあまりぶちゃいくじゃなかったです(おすべらかしが似合わないのですね…でも今回はすっきり見えました)。やはり存在感が出てきたと思います。