Snowtree わたしの頭蓋骨の下 *鑑賞記録*

舞台は生もの、賞賛も不満もその日の出来次第、観客側のその日の気分次第。感想というものは単なる個人の私感でしかありません。

国立大劇場『十二月歌舞伎公演「仮名手本忠臣蔵」』 1等A席1階後方センター

2010年12月26日 | 歌舞伎
国立大劇場『十二月歌舞伎公演「仮名手本忠臣蔵」』 1等A席1階後方センター

国立大劇場千穐楽、今年の芝居納めです。3回拝見する予定ではなかったんですが3週続けて観ることになりました。芝居は生もの、日によって違いますが、私が拝見した限り、今回の芝居は後半にいくにつれ尻上がりに役者の芝居が良く密になっていったように思います。かなり見応えが出てきていましたし観客の反応も良くなっていたように思います。

今回の上演形態に関しては個人的に満足いくものではなかったのですが、試みとして否定するものではありません。新しいことをしていくことは非常の大事だと思いますし、今回の上演も今後の上演の在り方を考える上で大事な上演であったとも思います。今回の演出の良い部分、悪い部分の両方をしっかり見極めて今後に活かしていただきたいなと思います。

なんてちょっと硬いことを書きましたが、役者さんたちの芝居を思いっきり楽しみました。皆さん、今年の芝居納めのせいか?ここは僕の見せ場だから的に思いっきりたっぷりたっぷり。そこを観客の私もたっぷり楽しませていただきました。また全体のまとまりも良かったです。全員がきちんとしっかり芝居をしている。こういう事ってとても大事です。

高師直@幸四郎さん、人物造詣はやはり?ではあったけど、だいぶイヤな輩にはなっていました。台詞廻しの部分で緩急をうまく使い尊大さを大仰に表現し、いやらしい雰囲気を出していました。そのためだいぶ判官を追い詰めることができるようになっていました。とはいえ、やはりどこか違うなと感じてしまいます。これは私の高師直像と噛み合わないだけで、役者のせいではありませんが。

由良之助@幸四郎さん、泣きの由良之助。存在感たっぷりに運命と悲哀を背負った男として演じていきます。ここまで泣きを表に出さなくてもと思ったりもしますが感情の在り方がわかりやすく等身大という言葉が浮かびます。また、幸四郎さんの由良之助は基本的に優しいですね。亡羊とした大きさがあまり無い代わりに、自分と相対する相手をしっかりと想うというか自分のためではなく、主君のため、残された諸志のため、という部分が際立ちます。

判官@染五郎さん、かなり表情豊かになり受けの芝居が良くなっていて、高師直@幸四郎さんとだいぶ芝居がかみ合ってきていました。まだもう少しと思う部分もありましたが、悔しい気持ち昂ぶりがきちんと伝わってきました。これで、もう少しふんわりとした風情がでるといかにもこの段の判官らしくなるかな。とはいえこの難しい役を初役でここまで持ってこれたのは褒めたいです。四段目の悲哀ぶりは非常に良かったです。覚悟を決めた表情が良く、終始緊張感を保って場がまったくだれません。台詞廻しなどはやはり勘三郎さん写しですね。

勘平@染五郎さんは悲哀の勘平のままでしたがそのなかでしっかり陰影が出てきていたかなと。とはいえまだどこか足りないかなあ。立ち回りは活き活きして良かったです。

平右衛門@染五郎さん、この役はしっかりモノにしてきたなという感じです。18日に観た時はお軽@福助さん対して弟ぽさが見えてしまいましたが、この日は声の調子も良く芝居の線が太くなり、平右衛門の真っ直ぐさを魅力的にしっかり見せてきたなと。

お軽@福助さんが非常に良かったです。どんどん良くなっていて、お軽の可愛らしさ、勘平一途さを華やいだ雰囲気で演じていました。七段目のウキウキした雰囲気から勘平を亡くしたことでの悲哀を丁寧にやりすぎることなくあくまでも可愛らしく演じていました。いつもは表情を作りすぎるかな?と思うことがあるんですが今回はそれを感じませんでした。台詞はほんとに上手いです。

判内@亀鶴さんが品よく軽妙に敵役をきちんと演じてらして気持ち良かったです。気持ちの良い芝居をするのって難しいと思うのですが、初役で(判内は初役ではなく2度目とのことでした。2007年2月に演じていらっしゃいました。訂正させていただきます。2007年の時は一際印象に、という感じではなかったので今回、成長ぶりを見せてくださった、ということででしょう(^^))公演の最初のほうからそれが出来ていた。地力のある役者さんだと思います。もっと色々拝見したいですね。最初から同じ拵えで演じたのも良かったです。キャラクターとしての立ち居地が判りやすいですし、役割もよくわかる。

他、それぞれの役者さんしっかり緊張感を持ちつつたっぷり演じてきていて非常に見応えがありました。


2 コメント

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ちなみに (あおき)
2010-12-30 17:13:48
亀鶴の伴内は去年だか???の歌舞伎座で、ニザタマの相手の時が初役だったりします。
ご指摘ありがとうございます (雪樹)
2010-12-31 16:39:28
あおき様

書き込みありがとうございます。
さっそく訂正させていただきました。
間違いを指摘してくださる方がいらっしゃるのは
本当にありがたいです。
また、ぜひ書き込みしてくださいませ。