Snowtree わたしの頭蓋骨の下 *鑑賞記録*

舞台は生もの、賞賛も不満もその日の出来次第、観客側のその日の気分次第。感想というものは単なる個人の私感でしかありません。

新橋演舞場『芸術祭十月大歌舞伎 夜の部』 1等1階前方センター

2012年10月20日 | 歌舞伎
新橋演舞場『芸術祭十月大歌舞伎 夜の部』 1等1階前方センター

『御所五郎蔵』、『勧進帳』ともに予想以上に面白かったです。どちらも「物語」としてわかりやすく鮮明な舞台でした。ベテランならではの芝居だったと思います。

『御所五郎蔵』
華やかさはなかったけど「物語」の提示がしっかりなされていて面白かった。

五郎蔵@梅玉さん、物語が立ったのは梅玉さんのお手柄かも。五郎蔵のニンではないし地味ではあるのだけど「物語」そのものの在り様を提示するのに長けてる方だとつくづく思いました。特に「五郎蔵内腹切の場」に説得力があった。

皐月@芝雀さんも素晴らしかった。五郎蔵への一途さや浅間家への忠節などの想いを的確に表現されていてまた艶もだいぶでてらしたかなと。時折、雀右衛門さんにハッと思うほど似て見えたり。「五郎蔵内腹切の場」の愁嘆場のクドキは圧巻でした。

星影土右衛門@松緑さん、かなり頑張っててとても良かった。台詞の部分ではまだ表現しきれてない部分も多々あるんだけど、土右衛門としての佇まいやさりげない所作が綺麗に決まってて先の期待を持たせた。

逢州@高麗蔵さん、凛としてて素敵だった。

五郎蔵の子分は若手中心でしたがやはり先輩格の亀寿さんが抜きん出て上手でした。

ただ全体的にはやはり梅玉さんと松緑さんとのバランスが悪かった…。書きたくないけど染五郎さんと松緑さんとだったらとの思いが…。昼の部の『国性爺合戦』は思わなかったんですけど…。梅玉さんの五郎蔵なら土右衛門は左團次さんあたり持ってこないと。

『勧進帳』
勧進帳が舞踊劇というよりストレートなお芝居だった。面白かったです!

弁慶@幸四郎さん弁慶、余計なものが削ぎ落とされて近年の幸四郎弁慶のなかでは個人的にベスト。今までが余計なものが付きすぎてたんだなと痛感。たぶん私が拝見した日はお疲れな部分はあったと思う。だが妙な力の入りようが無くなって持ち味の実直さが浮いてでて存在感が大きくなった。義経を守ろうと立ちはだかるその姿は大きな山のようでした。また台詞をうたいすぎない部分で声のよさが際立って台詞のひとつひとつが明快でまた感情豊か。そしてただひたすらに義経を守り、そのなかで富樫という人物に感銘と感謝の気持ちを抱いている弁慶でした。本当に良い弁慶でした。

富樫@團十郎さん、懐が大きい。私は團十郎さん富樫、好きですね。台詞を真っ直ぐに語りしっかり幸四郎さん弁慶を受けて演じてらしてとても良かったです。問答の間合いは丁々発止ではなかったけどしっかりとお互いの言葉を聞き合う形になり「芝居」の面白さが出たと思う。

義経@藤十郎さん、かなりお疲れの様子ではあったのですが守られるべき存在として象徴のような佇まいで説得力がありました。

太刀持ち@金太郎ちゃん、必死にトコトコと團十郎さん富樫に付いて行く姿が可愛らしい