Snowtree わたしの頭蓋骨の下 *鑑賞記録*

舞台は生もの、賞賛も不満もその日の出来次第、観客側のその日の気分次第。感想というものは単なる個人の私感でしかありません。

歌舞伎座『六月大歌舞伎 第一部『碇知盛』』3等A席前方上手寄り

2016年06月02日 | 歌舞伎
歌舞伎座『六月大歌舞伎 第一部『碇知盛』』3等A席前方上手寄り
『渡海屋・大物浦』

初役揃いの舞台です。それぞれが丁寧に演じていて物語をしっかり伝えるという部分で初日からいい出来でしたがアンサンブルのまとまりという点でまだこれからという感じでした。

銀平/知盛@染五郎さん、銀平は鯔背でかっこいいけどまだやりきれてない部分多々。まだ頭で考え中な雰囲気でした。輪郭をもっとクッキリと演じて欲しい。顔の拵えとともに色々と控えめすぎる。しっかりとこの役を物にしてほしいです。反対に知盛はストレートに気持ちが伝わってくる出来。精悍で美しくて、そのなかに滅びゆくものの妄執の哀れさがあって切ない雰囲気。悲壮感が凄くそして自分の運命に対し非常に悔しげでした。あれは祟る気満々。その部分に悲壮感を持たせた知盛に今日は見えました。

演じ方は幸四郎さんに習うと聞きましたが父と叔父のmixな感じを受けた。台詞廻しは叔父に近いかも。あと不思議と白鸚さんなのか2松緑さんかの存在をふと感じる瞬間が。こなれてきたらどうなるか楽しみです。

お柳/典侍の局@猿之助さん、お柳はいかにも宿屋の女主人といった風情でしゃべりも達者で巧い。天気予報の旦那ののろけ部分はまだメリハリがついてない。ここは難しいんですね。典侍の局は位取りはこれからかなと思うものの安徳帝への情が濃く激しさがあり見応えがある。京屋さんぽい雰囲気と思ったらやはり京屋なぞりだそう。たぶん京蔵さんに見てもらったのでは?

安徳帝@タケルくん、かなり台詞がしっかりとして良い出来でした。初舞台おめでとうございます♪

相模五郎@右近さん、息子の初お目見えということもあるのでしょうか、気合が入ってます。前半は真面目すぎるのかまだ滑稽味は出ていませんけど台詞が明瞭。ご注進ではきっぱりと。

入江丹蔵@亀鶴さん、柔軟に受けて返す。ご注進も明快で巧い。

義経@松也さん、丁寧に品よく。御大将の格はこれからかな~。


『時鳥花有里』
藤間勘十郎さんらしい華やかで趣向的な舞踊でした。きちんと第三部の導入部になっています。

なぜ染五郎さんがここにも出るの? と思ったのですが見れば納得の配役で軽妙さと妖しさと。梅玉さんの義経です感が素敵。魁春さんが雅び、笑三郎さんと春猿さんが美しい。東蔵さんの安定感。