・ 主人公のイメージにぴったりな時代劇初主演の松坂桃李。
このところメッキリ少なくなった時代劇を「必殺」「鬼平犯科帳」シリーズの老舗である松竹が久々に製作した王道のエンタテインメント時代劇。
佐伯泰英の原作を本木克英監督、藤本有紀脚本で主演・坂崎磐音を松阪桃李が演じている。
豊後・関前藩で許嫁の兄で友でもある小林琴平(柄本佑)を斬り脱藩、江戸で長屋住まいをしてる磐音。
鰻裂き職人の傍ら両替商今津屋の用心棒として働くが、新貨幣発行の利ザヤ争いに巻き込まれてしまう・・・。
時代劇初主演の松坂は王道の二枚目浪人剣士にピッタリな風貌での好演で、市川雷蔵や田村正和といった過去の時代劇スターの後継者になり得る存在と言っては褒めすぎか?
全51巻もの大ヒット時代小説の映画化はシリーズ化を狙っての本作であったが、残念ながら興行的に失敗して続編の声が聴かれていない。
原因は物語を追うのが精一杯の脚本にあったと思う。これは脚本家の力調不足というより関前藩の前半と江戸での事件を二時間で纏めるという無理な筋書きによるもの。
登場人物のクレジット入りという手法で話を判りやすくしようという努力も空しく、観客を置き去りにしてしまった。MISIAのエンディングテーマも違和感が・・・。
奥田瑛二・柄本明などベテラン敵役も中途半端と空回りで、辛うじて中村梅雀・木村文乃の親子が微笑ましくはまっていた。
決闘シーンなどの殺陣や許嫁・なお(芳根京子)の花魁道中などハイライト・シーンは充分見応えがあっただけに勿体ない。
続編で是非捲土重来を果たして欲しいが、さしあたっては松坂・芳根コンビの時代劇「雪の花」が小泉堯監督で実現するのを楽しみにしたい。