あるくみるきく_瀬戸内シーカヤック日記

瀬戸内を中心とした、『旅するシーカヤック』の記録

瀬戸内シーカヤック日記: 森本孝さん、『宮本常一と瀬戸内沿岸の写真』

2010年08月29日 | 旅するシーカヤック
2010年8月29日(日) 今日は、三原市本郷で行われる『瀬戸内巡回展_宮本常一がみた芸予の海とその暮らし』の一環として行われる、森本孝さんの講演会『宮本常一と瀬戸内沿岸の写真』の聴講の日。

少し早めに会場に到着したので、少し離れた昔のメインストリートをしばし散策してみる。
もう9月になろうと言うのに、今日も朝から”もわっ”とした蒸し暑い空気が体にまとわりつき、少し歩くだけで汗が噴き出してきた。
 
興味を引かれたのは、『恵美須神社』 なんだかとても良い雰囲気である。
 
鳥居には、これまで見た事のない『向かい合わせになった二匹の鯛』が彫られている。 また狛犬は、左右それぞれが子供の狛犬とセットになっており、これまた珍しい。

うん、これはなかなか良い一日のスタートじゃないか!
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10時前に写真展示を見て回り、今日の講演会場へ。 すると、森本さんが準備をされていた。
『こんにちは。 ご無沙汰してます。 今日は聴きに伺いました』 再会の挨拶をさせていただき、『旅する櫂伝馬』が無事に航海できた事を報告する。
時折私のブログも見ていただいているとの事。 うれしいなあ。

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10時。 講演が始まった。 最初は、森本さんが観文研にかかわる事になったいきさつから。

立命館大学で探検部だった森本さんが、ある方の紹介で宮本常一と観文研を知り、東京に出た時に秋葉原から電話をすると、近いから寄りなさいと言われ、行ってみると所長の宮本常一が居り、そのニコニコと笑う笑顔がとても印象的だったそうだ。

当時、山が好きで山小屋の管理人にでもなろうと思っていたという森本さん。 宮本常一から『アルバイト代くらいなら出せるから』と言われて、観文研に関わることになったのだとか。

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その後出て来た名前に驚いた。 それは、『高野悦子』
大学生の時に読んだ覚えがある『二十歳の原点』 その本を当時住んでいた寮で読み終わった日が、偶然にも彼女が自殺した日と一致していたため、とても印象深く覚えている。 まさか、宮本常一の講演会で、高野悦子の名前が出るとは。。。

森本さんによると、立命館大学に入り、探検部の部室を訪ねて来た高野悦子さんを見たのだとか。 結局、探検部には入らず、ワンダーフォーゲル部に入ったそうだが、実は彼女が立命館に入る切っ掛けをつくったのが『宮本常一』

通っていた高校で、創立91周年の記念講演があり、そこに宮本常一がやってきた。 その中で宮本常一は、『古いものが新しい』と話し、それが彼女の心に残って歴史の道を選んだのだ。 そして歴史を勉強するなら、長い歴史のある京都でということで、立命館を選んだとのこと。

森本さんが本の一部を引用されたが、『二十歳の原点ノート』に、宮本常一の講演を聞いた事が記されていた。

高野悦子の進路を後押しした宮本常一。 そして森本さんが観文研に入り、フィールドワークの道に進む事を後押ししたのも宮本常一。 そして、森本さんと高野悦子さんとの偶然の出会い。
森本さんは、『人の縁とは不思議なものである』と語られたが、まさに、こんな不思議な縁を誰が知っていたであろうか?

そしてかく言う私も、シーカヤック仲間から教えられた宮本常一が縁で、『あるくみるきく_旅するシーカヤック』がライフワークとなり、とあるブログが切っ掛けで森本さんとの縁ができ、そしてこの会場に座っているのである。

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その後も、民俗学者として一括りにできない宮本常一という人について、そして観文研についてのお話が続く。

あるとき、東北地方を巡る長い旅から帰ってきたら、宮本常一が ”最近はどうかね?” と聞いて来たそうだ。 森本さんは、『ええ、貧乏で困ってます』
すると宮本は、『ビンボーはええじゃろ。 ビンボーじゃないと、貧乏人の気持ちは分からんからなあ』と笑っていたそうだ。 これには森本さんも笑って返すしかなかったそうである。

でも今日は、『たまには金持ちの気持ちも分かってみたい』と会場の笑いを誘っていた。 いやあ、ほんと、その通りだ。 たまには金持ちの気持ちも知りたいな!

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『人も地方も自信を持つ事が大事。 名もなき庶民の素晴らしさを見つけ出し、光をあてる』

『宮本の写真は、庶民の生活の絵巻物』

『誤解している人もいるが、宮本は弟子を持たなかった。 彼が持っていたのは仲間である』

『観文研は、同じ志を持った人が集まる場であり、同じ志を持った人たちがつながった場である』

『宮本常一は、観文研の研究員に対して、毎月一回講義を行っていた。 これを通じて、モノを見る力と視点を教えられ、研究員の育成にもなっていた。 この講義が、宮本常一が仲間を育成していくやりかたである。 そしてこの講義を受けてモノの見方を学んだ事が、観文研出身の研究者と、大学だけで学んだ研究者との最大の違い』

森本さんは、宮本常一が観文研で実際に行った『三味線』に関する講義の録音テープを持参しておられ、会場で10分程度流された。
貴重な宮本の肉声講義。 しばし、しんと静まった会場で聞き入る。

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『宮本常一は、古い文化を復興させ、それを地域の将来につなげていくことを考えていた』 うん、これぞまさに、私が瀬戸内カヤック横断隊から学んだ、『瀬戸内海洋文化の復興、創造そして継承』そのものじゃないか!

講演後、偶然にも大崎上島出身で『旅する櫂伝馬』も応援して下さっていた方から声を掛けていただくなど、ここでも『人の縁の不思議』を実感。
最後に、森本さんに挨拶をして会場を後にした。

興味深く、かつ貴重なお話をいろいろと聞くことができ、とても有意義な講演会だったなあ。 そして特に私は、森本さんが言っておられた、『ぜひ皆さんも、瀬戸内の島々や農村へ出掛け、写真を撮り、人々の話を聞き、記録に残していきましょう』、の言葉に元気をいただいた。

この週末は、夏のシーカヤック教室&森本孝さん講演会。 8月最後も、またまた良い週末であった!
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