岸田文雄政権は「コロナ対策」の新たな方針を示すとしていますが、目に見えないところの対策がすっぽり抜け落ちています。
たとえば、後遺症対策です。
新規感染数は減少していても、後遺症の深刻さは続いています。様々な症状とともに、それが理由で職場を回顧される例が後を絶たないと報じられています。日本はその対策・研究がきわめて遅れています。
後遺症対策を国家予算でみると、アメリカ(国立衛生研究所)約1300億円、イギリス(国立衛生研究所)約30億円に対し、日本(厚労省)は約2憶円にすぎません(11月2日NHK「クローズアップ現代プラス」)。
さらに深刻なのが、ワクチンの安全性の検証・対策です。
菅前政権以来、自民党政権はワクチンの接種率を上げることで一点突破を図ってきましたが、その安全性に関する調査・研究は大きく立ち遅れています。それは、ワクチン接種後の死亡とワクチン副反応の因果関係の調査がほとんど行われていないことに端的に表れています。
10月21日放送の「クローズアップ現代プラス」よれば、10月現在、日本でワクチン接種直後に死亡した人は約120人います。そのうち、死亡とワクチン副反応の因果関係(ある・なし)が明らかにされたのは0・7%にすぎません。99・3%は「評価不能」として処理され、解剖もされないまま火葬に付されています。ほとんどが闇に葬られているわけです。
なぜこのようなことになるのか。政府(厚労省)でワクチンの副反応を調査・研究している部署(副反応検討部会)のスタッフはわずか15人。そこで約4万件のデータを分析しています。スタッフとデータの決定的な不足です。
アメリカの体制はまったく違います。アメリカにはVSD(ワクチン安全データリンク)という機関があり、国を挙げてワクチン副反応に関するデータの収集・分析を行っています。データ数は1200万人にのぼるといいます。
VSDができたのは、1970年代にワクチン接種をめぐって訴訟が相次いだため、米政府がその教訓を将来に生かそうとしたものです。
番組では厚労省の担当者も、「VSDがあることは理想」と、「日本版VSD」の必要性を認めています。しかし歴代自民党政権は、アメリカのVSDを横目に、日本で体制強化を図ろうとはしてきませんでした。
そのため、独自にデータの収集・分析を行っている民間の研究者がいます。九州大学の福田治久医師です。7自治体から約90万人分のデータを集めて解析しています。福田氏は「500万人分のデータはほしい」としてこう強調します。
「安全はワクチンに必須です。国を挙げて取り組む必要があります」
自民党政権はワクチンがまるで万能であるかのように喧伝し、市民もそれを疑っていない風潮がみられます。しかし、新しいワクチンは研究途上です。政権(国家権力)が政治的・経済的思惑からワクチンを半ば強制するのはきわめて危険であり、許されません。
ワクチンが重要な意味を持つことは間違いありませんが、そのためにもその安全性についての調査・研究を抜本的に強化することは不可欠です。「日本版VSD」が切望されます。