アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

「野党共闘」―日本共産党総括の5つの疑問

2021年12月07日 | 日本の政治と政党

     

 政治改革において「野党共闘」が必要であることは言うまでもありません。それだけに、今回の総選挙で行われた立憲民主、日本共産党、れいわ、社民党4党の「野党共闘」(以下、共闘)をどう総括するかは極めて重要な問題です。

 共産党は11月27日の第4回中央員会総会でその総括を行いましたが、多くの点で疑問を禁じ得ません。志位和夫委員長の幹部会報告(11月29日付しんぶん赤旗)および関連の記者会見などに基づいて問題提起します。

 1に、「共通政策」の評価について。

 4野党と市民連合が合意した20項目の「共通政策」について志位氏は、「大義もあれば魅力もあるもの」「国民への公約」だとし、今後も「誠実に順守」するとしています。
 ところが、市民連合の代表で今回の共闘の立役者の1人である山口二郎法政大教授は、総選挙を振りかえり、「国民は変化を望んでいないことが明らかになった」と驚くべきことを言った上で、こう述べています。

もちろん、野党側が魅力的で信頼に足る政策構想を打ち出せなかったことが原因だろう」(11月28日付ハンギョレ新聞日本語電子版)。

 これは志位氏(党幹部会)の評価とは明らかに相違しています。この食い違いは何なのか。これを放置したまま今後も「誠実に順守」することは不可能ではないでしょうか。

 第2に、「共通政策」の内容について。それは果たして政治変革を求める市民にとって「魅力あるもの」だったのか。

 20項目が重要な課題であることは明らかです。しかし、そこには当然含まれるべき重要な内容が抜け落ちています。

 例えば、重要な柱である戦争法(安保法制)についても、立憲民主に合わせて「違憲部分を廃止」としているだけで、法律全体の廃止は主張していません。何が「違憲部分」かも明らかではありません。また、膨張する軍事費(「防衛費」)、改めて大きな問題になっている日米地位協定、さらに現代の治安維持法とも言うべき「土地規制法」については、その文言すらありません(10月2日のブログ参照)。

 「共通政策」は政権構想とは異なる当面の課題ですが、それがこの内容でいいのか。見直して充実させる必要があるのではないでしょうか。

 第3に、「政権協力」と共産党の独自政策、とりわけ日米安保廃棄との関係について。

 志位氏は「日本共産党が日米安保廃棄、自衛隊違憲などの主張をしていることをとりあげて、「安保・外交政策が違う政党が組むのは野合」といった攻撃が吹き荒れました」と総括しました。

 自民党などの反共攻撃とは別に、有権者・市民の中からも「安保・外交政策が違う政党が組む」ことへの疑問がわくのは当然ではないでしょうか。今回の共闘は「当面の緊急課題」によるそれではなく、「政権協力」だったのですからなおさらです。それを「攻撃」と一蹴するのはきわめて不誠実と言わねばなりません。

 問われるべきは、共産党が「日米安保廃棄、自衛隊違憲」などの党の独自政策と、「政権協力」の関係を明確に説明してこなかったことです。

 そればかりか、共産党は独自ビラに明記した「日米安保条約を廃棄」の文言を、選挙公報では削除するなど、選挙戦の中で「日米安保廃棄、自衛隊違憲」を前面に出しませんでした。これは党の独自政策と「共闘」「政権協力」の関係が明確に理論化されていないからではないでしょうか。

 共産党が「日本の歴史でも初めて、日本共産党が協力する政権」(志位氏)を目指すなら、この問題は避けて通れません。共産党に求められているは、「日米安保廃棄、自衛隊違憲」の独自政策と「政権協力」の関係の理論化、政策化することです。

 第4に、連合との関係について。

 「対等平等」「相互尊重」の共闘にとって、反共組織・連合が大きな障害になっていることは言うまでもありません。
 ところが志位氏は、11月28日の記者会見で、「連合の芳野友子会長が、共産との「野党共闘」に否定的な見解を繰り返していることについて、「私たちは協力を願っている」と秋波を送った」(11月28日の朝日新聞デジタル)のです。

 これは驚くべきことです。そもそも労働組合の連合が特定政党支持を強制し、組合費で選挙・政治活動を行うことは、民主主義の重大な蹂躙です。共産党もかつて厳しく批判していました。それが、今は逆に連合に「秋波を送る」。いったいどうなっているのでしょうか。

 「連合は野党共闘に介入すべきではない」ときっぱり主張すべきです。

 5に、選挙制度について。

 志位氏は「いまの選挙制度のもとで政治を変える道は共闘しかありません」と述べています。「いまの選挙制度」とは小選挙区比例代表並立制ですが、その実態は小選挙区制です。小選挙区制は民主的選挙制度に逆行するばかりか、政党の多様性を奪い、「(保守)二大政党制」に導く元凶です(11月8日のブログ参照)。

 しかし、志位氏は小選挙区制の問題には一言も触れていません。

「いまの選挙制度のもとでは…」と現状を固定化させて「政権交代」を図るのではなく、小選挙区制を廃止し、多様な世論が反映される民主的な選挙制度(完全比例代表制)への転換を図ることこそ、政治改革の道ではないでしょうか。それは共産党の「独自政策」でもあるはずです。

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 側近の日記にみる天皇裕仁の... | トップ | 国政の最大問題は軍事費の異... »