アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
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日本による「朝鮮皇后暗殺」の歴史を直視しよう

2018年10月08日 | 朝鮮半島・在日コリアン差別と日本

     

 20年前の今日(1998年10月8日)、日本(小渕恵三首相)と韓国(金大中大統領)との間で「日韓パートナーシップ宣言」が行われたことは、メディアでも取り上げられています。
 しかし、それからさらに約100年前の同じ10月8日(1895年)、日本がソウル(京城)で起こした重大事件が振り返られることはほとんどありません。

 「1895年10月の真夜中、日本公使(今日の大使―引用者)の三浦梧楼(退役中の陸軍中将―同)が日本守備隊と大陸浪人を使って王宮に侵入し、王妃である明成(ミョンソン)皇后(閔妃―ミンビ)を殺害したうえ、凌辱して焼き捨てるという蛮行」(尹健次著『もっと知ろう朝鮮』岩波ジュニア新書)が行われたのです。

  いわゆる「閔妃暗殺事件」です。角田房子の詳細な調査による『閔妃暗殺』(新潮文庫)などで知られています。ただし、尹健次氏によれば、「『閔妃』とは、殺害後、日本側が明成皇后を見下してつけたよび名」(前掲書)とのこと。知りませんでした。今後は「明成皇后暗殺事件」と呼ぶことにします。

  駐在大使が軍隊とヤクザを使って真夜中に王宮に侵入し、皇后(王妃)を殺害したうえ凌辱し、その場で焼き捨てる―こんな信じがたい蛮行が実際に行われた、日本が行ったのです。

  事件の歴史的背景・意味は何でしょうか。

  「閔妃は当時、44歳、美貌の王妃であり、国王の権力を強化するために政治的にも大きな力を持っていました。日清戦争(1894年)中の日本のやり方に苦々しい思いをしていたに違いありません。この閔妃こそ、ロシアと接近して日本を排撃しようとしている張本人だ、これを亡き者にして、日本の勢いを取りもどそう、そう三浦公使は考えたのです」(中塚明氏『日本と韓国・朝鮮の歴史』高文研。写真中は景福宮の裏門に近い明成皇后殺害の地。左に立つのは皇后の墓。中塚氏の著書より)

  金文子氏(奈良女子大職員)は「狙いは『電信線』の確保だった」と指摘しています。日本がアジア侵略の常とう手段としていた「電信線」の確保です。

 「明成皇后殺害事件は、日清戦争の講和が成立し(1895年4月・下関条約―引用者)、三国干渉が起こった後も、朝鮮における電信線を日本の手に確保するため、引き続き日本軍の駐兵を望む日本政府と大本営の意を受けた全権公使三浦梧楼が、その障害となる王妃―ロシアと結んで日本に対抗する姿勢を見せていた王妃―を除去し、親日政権の確立をめざして、京城守備隊という日本の軍隊を使って引き起こした謀略事件である。
 謀略事件たるゆえんは、『訓錬隊』という日本人士官が訓練する朝鮮軍が大院君(明成皇后の義父―同)を擁して起こしたクーデターを装った点にある」(金文子氏『朝鮮王妃殺害と日本人』高文研。写真右は事件の関係者が描いた現場の地図。金氏の著書より)

  さらに重大なのは、事件後の日本の処置です。

  「明成皇后殺害については…当時一国の国家元首の正夫人であったという位置づけからして、国際的な重大事件であったことはいうまでもありません。しかし日本は当初、事件が朝鮮軍内部の紛争によるものであるかのようによそおい、ついで国際的な非難の的になりそうだとみるや(殺害現場をロシア人技師らに目撃されていた―引用者)、三浦らを日本につれもどし、形だけの裁判にかけ(広島地裁―同)、ほとぼりがさめるとすぐに証拠不十分で釈放してしまいます。三浦はのちに枢密院顧問官になり、また晩年は政界に黒幕として暗躍しますが、これは日本の侵略主義の本質をよく示すものです」(尹健次氏、前掲書)

  明成皇后暗殺事件は、江華島事件(1875年、9月22日のブログ参照)から20年、日清戦争の翌年、日露戦争(1904年)の9年前という時期に起こっています。まさに朝鮮侵略・植民地支配への大きな節目でした。ほんの123年前の信じがたい事件です。

 朝鮮の人たちにこの日本の蛮行が強く刻印されていることは言うまでもありません。一方、日本でこの事件を知っている人がいったい何人いるでしょうか。この重要な歴史的事件を学校で教えないことは、三浦らを無罪釈放した当時の日本政府とどこが違うのでしょうか。

 この歴史の知識・認識の大きなギャップ、日本人の認識不足、日本の歴史教育の欠陥が、安倍政権の「朝鮮敵視政策」・在日朝鮮人差別の根底にあることは確かでしょう。

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