アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

グローバルサウスの力と「非同盟」の道

2023年09月14日 | 国家と戦争
   

 インドで開かれていたG20 (主要20カ国・地域首脳会議)(9日~10日)。日本のメディアは習近平主席やプーチン大統領の欠席を話題にしましたが、最も注目されたのは、グローバルサウスと言われる国々の存在感でした。ロシア、中国代表も参加する中、ウクライナ情勢を含め首脳宣言(全会一致が原則)が危ぶまれていれましたが、採択されました(写真右)。それもグルーバルサウスの力でした。

 10日付の朝日新聞デジタルは、「G20 首脳宣言を「救った」グローバルサウス」の見出しで、その「舞台裏」を報じました。

<膠着状態が動いたのは開幕2日前。インド、インドネシア、ブラジル、南アフリカの4カ国が、ウクライナ情勢について「中間地点」とする独自案を提示した。それが土台となって議論は動き出したという。
 4カ国はいずれも「グローバルサウス」と呼ばれる新興・途上国のなかの有力国。覇権を争う大国とは巧みに距離をとって立ち回ってきた。>

 とくに中心になったのは開催国のインドでした。インドの学者がこう解説します。

「インドは長く英国に植民地支配されました。独立後は、どの陣営にも属さないという非同盟、戦略的自律政策を取りました」「インドは、西側諸国とロシアや中国とのはざまに位置しようとしています。古代の格言に、「話すらしなければ、その関係は二度と元には戻らない」というものがあります。関係を改善するには、当事者間のパイプが必要であり、不確実性の時代において、インド政府はその役割を担おうとしているのです」(ジャワハルラル・ネール大学のチョードリー教授、9日付朝日新聞デジタル)

 また、グルーバルサウスの国の多くがロシアへの経済制裁に加わっていないことについて、ブラジルの学者はこう述べています。

「多くの場合、制裁はその国の為政者ではなく、貧困層に負の影響を与えるからです。…グルーバルサウスの中には、安保理決議を経ないまま(03年に)イラクを攻撃した米国を批判する国もあります。彼らは問いかけます。「誰か米国に制裁を科しましたか?」と」(ブラジル・FGV大学のストゥンケル准教授、7日付朝日新聞デジタル)

 同准教授はさらにこう続けます。

「ブラジルは、米国以外の大国との関係を維持することが、中南米を長年従属地域とみなしてきた国とのバランスを取る最善の方法だと考えています。…ブラジルは、インドや南アフリカなどと同じように、どの陣営にもつかない「非同盟」の維持を望んでいます。グローバルサウスが直面する最大の課題は、この「非同盟」をどこまで維持できるかということです」(同)

 アメリカを中心とするG7 の多く、そして日本は、かつて他国へ侵略して植民地化した旧宗主国・覇権国です。一方、グルーバルサウスの多くはその被害を受けてきた国々です。だからこそ「どの陣営にもつかない非同盟」を目指しているのです。

 旧宗主国・覇権大国が世界を牛耳っている限り、世界に戦争・紛争は絶えないでしょう。「非同盟」こそこれからの世界に求められている国際関係です。

 その意味を、勝俣誠・明治学院大名誉教授はこう指摘します。

「今やアフリカ、アジア、南アメリカを巻き込んだ地球人口の3分の2を占める貧者の圧倒的大衆としてのグローバルサウスの声は、核戦争と地球環境の破壊を避け、何よりも持続可能で万人が安心して尊厳をもって暮らせる世界の秩序の実現を探る新たな地球民主主義の展望を示唆しているといえよう」(「ウクライナ危機とアフリカ―グローバルサウスの復権」、「世界」10月号所収)

 日本がグルーバルサウスの国々とともに、「新たな地球民主主義」を目指すことになれば、どんなに素晴らしいでしょう。そのためには、過去の侵略戦争・植民地支配の過ちをはっきり反省・謝罪し、1日も早く日米軍事同盟=安保条約を廃棄して「非同盟」の道を進まなければなりません。

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