アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
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官邸が首相記者会見を“事前検閲”

2023年09月15日 | 政権とメディア
  
 政権(国家権力)のメディア支配、メディアの権力追従はここまできていたのか―。そう驚かされる論稿がありました。

 山田健太専修大教授(言論法)の琉球新報定期コラム「メディア時評」(月1回)の今月の論稿(9日付)。「記者会見の政治利用」と題して山田氏はこう書いています(太字は私)。

<本来は、会見の場で政治家が一方的に自説を開陳し、質問を受け付けないとか、特定の記者(社)の出席を拒否したり質問を認めなかったりするという行為は許されるものではない。ただし残念ながら実態は、会見を実質的に政治家の側が仕切る状況が一般化している。
 たとえば首相の官邸会見はその典型例で、出席者の数や顔ぶれに始まり、司会を官邸が行い、事前に質問を提出させ、それに従って質問者を指名し、さらに追加質問は認めないという運用がなされている。>

 首相の官邸会見で政府側が司会をし、出席人数を制限し(「コロナ」を口実にいっそう制限)、追加質問を認めない、という不当運営が行われていることは周知の事実で、これだけでもたいへんな問題です。

 ところがそれだけではなく、「事前に質問を提出させ、それに従って質問者を指名」しているというのです。これが事実なら(山田氏の言明なので事実でしょう)、他の不当運営とは別次元の、きわめて重大な事態と言わねばなりません。

 事前に質問内容を提出させて質問者を選ぶとは、政権に都合の悪いものは質問させないということであり、政権(国家権力)による事前検閲以外の何ものでもありません。
 憲法は、「検閲は、これをしてはならない」(第21条)と規定しています。記者会見の事前検閲は明白な憲法違反です。日本政府の「表現・報道の自由」侵害はここまで進んでいるのです。

 同時に重大なことは、政権によるこの明白な報道弾圧をメディア側が唯々諾々と受け入れていることです。

 メディア側がこの事態を問題にし、政府に抗議・撤回を申し入れたとは報じられていません。現場の官邸クラブ、政治部、メディア本社、さらに日本新聞協会、記者の労働組合である新聞労連は何をしているのでしょうか、なぜ沈黙しているのでしょうか。

 メディアだけではありません。官邸記者会見には、江川紹子氏や神保哲生氏らフリーランスも参加しています。かれらにも「事前の質問通告」(事前検閲)の網はかぶされていたのはずです。なぜ抗議し、問題を社会に訴えなかったのでしょうか。

 記者会見は当然メディア側の主導(司会、運営)で行うべきです。とりわけ官邸の首相記者会見はテレビ中継も行われる影響力の大きさから、政権側に運営をゆだねるべきではありません。
 まして、「事前の質問通告」は即刻やめさせなければなりません。
 メディア・ジャーナリストは一体になって、この問題で直ちに行動をおこすべきです。
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