アリの一言 

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「汚染魚」表記の予定候補を下ろした日本共産党の自己矛盾

2023年09月13日 | 日本共産党
   

 日本共産党の小池晃書記局長は11日国会内で記者会見し、次期衆院選で広島6区から党公認で立候補を予定していた村井明美氏(75)が「立候補を辞退した」(12日付しんぶん赤旗)と発表しました。

「小池氏は、村井氏がX(旧ツイッター)上でツイートした「汚染魚」との表現について、「日本近海の魚が放射性物質によって汚染されているということは、わが党の認識と見解に反する」と述べ、党書記局として、「ツイートを削除し、謝罪するよう本人に指示した」と語りました。
 その後、村井氏から広島6区の候補を辞退したいとの申し出があり、11日の常任幹部会で辞退が承認されたことを説明しました」(同しんぶん赤旗)

 村井氏が「立候補を辞退した」形をとっていますが、実際は党中央が村井氏を予定候補から下ろした(処分した)と言えます。この経過には大きな問題が2つあります。

 第1に、処分理由の自己矛盾です。

 小池氏は「日本近海の魚が放射性物質によって汚染されているということは、わが党の認識と見解に反する」と説明しました。しかし、共産党は一貫して海洋放出されたのは「汚染水」だと言っています。

 現に小池氏は同じ11日の記者会見で、記者が「「汚染水」との言葉を使うのをやめるべきではないか」と質問したのに対しこう答えています。

「『汚染水』という言葉を使ってはいけないかのような議論にはくみしない。…溶け落ちたデブリに接した水なので…アルプス処理によって現時点では排出基準は下回ったとしても…私たちは汚染水と呼んでいる」(12日付しんぶん赤旗)

 これは正当な主張です。海洋放出されたのは汚染水、あるいは処理汚染水と言うべきものです。いずれにしても汚染されています。その犯人は言うまでもなく東京電力と日本政府です。

 そうであるなら、汚染水の中に住む魚を「汚染魚」と言って何が間違っているのでしょうか。汚染水だと言いながらその中の魚は「汚染されていない」という共産党の「認識と見解」は支離滅裂、自己矛盾も甚だしいと言わねばなりません。

 村井氏の「汚染水」表記は事実にも、また、「汚染水」と呼んでいる共産党の方針にも反していません。

 この件で直ちに想起されるのは、野村哲郎農水相の「汚染水」発言です。岸田首相は「汚染水」の言葉が「関係者に迷惑をかける」として直ちに厳重注意し火消しに躍起になりました(2日のブログ参照)。「汚染魚」表記で「関係者のみなさんに謝罪をします」(小池氏、同上しんぶん赤旗)という共産党中央の対処は岸田政権のそれとどこが違うのでしょうか。

 第2に、経験豊かな女性政治家を予定候補から下ろした重大さです。

 党中央の自己矛盾に満ちた「理由」で、村井氏は予定候補から下ろされました(下りざるをえませんでした)。村井氏は広島県福山市の市会議員を長年務め、衆院選にも何度も立候補するなど、保守地盤の強い地で共産党の看板を背負って奮闘してきた女性政治家です。

 それが今回のような理不尽な理由で事実上政治生命を断たれる処分を受けました。処分の当否・軽重は党内問題なのでこれ以上言及しませんが、女性政治家をもっともっと増やなければならない時に、きわめて残念です。

 小池氏は以前、党内での「パワハラ」が認定され、警告処分を受けました(22年11月14日)。しかし、小池氏は党内ナンバー2の書記局長の地位に居続けています。それは小池氏が最高幹部の1人だからなのか、それとも男だからなのか。今回の村井氏とはあまりにも対照的です。

 日本共産党には自省・自戒しなければならない問題が多々ありますが、今回のことはそのリストに新たなⅠ行を加えたと言えるでしょう。

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