アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
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ウクライナ「商業施設にミサイル」報道の危うさ

2022年06月30日 | 国家と戦争
  

 27日、ウクライナ中部(クレメンチュ)のショッピングセンターで火災が発生し、多数の犠牲者が出たことに対し、ゼレンスキー大統領は「欧州史上最も挑発的なテロ行為の一つだ」と最大限の言葉でロシアを非難し、アメリカにロシアを「テロ国家」に指定するよう要求しました。

 折からのG7では声明で、「市民に対する無差別攻撃は戦争犯罪」と、プーチン大統領を名指しで批判しました。

 日本のメディアはこれに同調し、「商業施設にミサイル」の見出しで、「ロシア軍のミサイルが撃ちこまれた」(29日付地方紙各紙=共同電)と断定的に報じました。

 国連安保理はこの問題で緊急会合を開き、ゼレンスキー氏がビデオでロシアを安保理から排除することを訴えました。

 こうしてショッピングセンターの火災はロシアのミサイル攻撃だと断定され、ロシアを一方的に非難していますが、それははたして正当でしょうか。

 この火災について、ロシア側はこう言っています。

「ロシア国防省は28日、欧米側からウクライナに送られた武器・弾薬が保管された倉庫を攻撃した結果、弾薬が爆発し、隣接するショッピングセンターで火災が発生した、と発表。ロシア大統領府のペスコフ報道官も、ウクライナ側が言うようなショッピングセンターへの意図的攻撃ではない、と述べた」(29日朝のNHKニュース)

 このロシア側の主張が事実なら、「ショッピングセンター火災」の評価は大きく変わってきます。

 NHKの「解説」(29日の「キャッチ 世界のトップニュース」)でも、確かにショッピングセンターは兵器保管庫(工場)の近くにあります(写真右)。保管庫が攻撃されたことも事実のようです。ただ、フランスやイギリスの国営放送は保管庫攻撃の前にショッピングセンターが攻撃されたと報じ、NHKはそれに依拠してロシアの主張はフェイクだとしています。

 真相はまだ明らかではありません。しかし、明らかなことがあります。それは真実が明確でない段階で、「商業施設にミサイル」と断定する報道は、一方的にウクライナの主張が正しいとする偏向報道だということです。

 国連安保理の緊急会合でも、「独立した調査で真相究明を求める声」(NHK)が出たのは当然でしょう。

 もう1つ、明らかなことは、ショッピングセンターが兵器保管庫の近くにあり、ウクライナ政府はそこでの営業を認めていたということです。

 ロシアが米欧の兵器供与に強く反発し、その保管庫をミサイル攻撃しているのはロシアも公表している周知の事実です。そうである以上、兵器保管庫に近いショッピングセンターの営業を認めることは市民を危険にさらすことになります。

 営業を認めていただけではありません。

「(ショッピングセンターの)店員はロイターに、警報が鳴ったため近くのシェルターに避難しようとしたところ、ミサイルが着弾したと説明。ただ警報が鳴っても店舗の営業を続けることが認められていたため、多くの人が建物内に残っていたという」(29日付沖縄タイムス=共同電)

 ウクライナ政府は空襲警報が鳴っても、ショッピングセンターの営業を続けることを認めていたというのです。それが退避を遅らせ、犠牲を大きくしたという証言です。
 これはロシア側の主張ではなく、共同通信の報道です。

 戦争中、空襲警報が鳴っても避難しなくていいとは信じがたいことです。こうしたウクライナ政府の指示・方針は、沖縄戦の悲劇を拡大した「軍民一体」と同じ思想で、市民の生命・安全を守る政府の義務に反しているのではないでしょうか。

 ショッピングセンター火災の真相は今後まさに独立した調査で明らかにされる必要があります。
 同時に、その如何にかかわらず、市民を危険にさらしたゼレンスキー政権の責任も問われる必要があるのではないでしょうか。
 それを不問にして一方的にロシアを非難するのは、けっして正当とは言えないでしょう。

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