アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

映画「香港 裏切られた約束」で「民主化闘争」を考える

2024年09月10日 | 人権・民主主義
   

 映画「香港 裏切られた約束」(2024年)が6~8日、京都市内で上映されました。上映後、トウィンクル・ンアン(顔志昇)監督(写真中)のトークショーもありました。
 「裏切られた約束」とは香港がイギリスから中国に返還された際(1997年7月)、市民の政治的自由を少なくとも50年間保証するとした「一国二制度」のことです。

 映画は香港当局・中国政府による規制強化に抗議した2019年6月からの「香港民主化運動」を記録したドキュメンタリー。2 時間の映画はほぼ全編、若者たちデモ隊と警察の攻防です。

 ンアン監督は香港の事態を記録する使命感から、パティシエをしながら貯めた金でカメラを買い、映画製作技術をネットで自学し、現場でカメラを回しました。とりわけ香港理工大学での攻防では自らも大学内に入り、命懸けで取材しました。いまはイギリスに亡命しています。

 トークショーでンアン監督は、「香港を愛する私たち香港人は、香港内外で5年間、苦しみ続けています」「日本のみなさんにその精神が伝わればうれしい」と述べました。

 民主化デモのもようは日本のメディアも報じましたが、実際の攻防戦の中で撮影された映像、若者たちの肉声には、外からの報道では伝わらないものがありました。

 言論・集会の自由、国家権力への抗議を表明する自由の大切さをあらためて痛感しました。

 同時に、国家権力・警察の暴力に対し、やむを得ず火炎瓶で抵抗し、多くの犠牲者を出した「民主化運動」に複雑な思いも禁じ得ませんでした。

 デモ隊を支援したある男性が、「非暴力主義者もデモに加わるべきだ」と言う場面があります。一方、犠牲になった若者たちの追悼式に、(おそらく若者たちとは面識がない)年配の女性が駆け付け、「もう誰も死なないで。みんな無事に家に帰って」と号泣しながら訴える場面もありました。

 私はやはり非暴力主義を支持します。若者たちの純真さ、自由を求める真剣さと警察の暴力に立ち向かう勇気には心揺さぶられながらも、やはり、その運動(実力抵抗)は妥当だったのか検証される必要があるだろうといます。

 デモ隊の運動を市民はどう見ていたのでしょうか。香港で反国家権力・自由獲得の非暴力運動は行われていなかったのでしょうか。今はどうなのでしょう…。そうした点は、この映画では触れられていません。他のメディアもほとんど報じていないと思います。

 映画では、香港の「民主化運動」を支援する集会が今年6月に日本の衆院議員会館で行われたもようも映し出されました。出席した衆院議員の中には元防衛相の自民党議員もいました(写真右)。「反中国」の政治的思惑がうかがえます。

 「香港民主化運動」について的確な論評をする力は私にはありません。ここでも自分の無知、不勉強を痛感します。ただ思うのは、この問題にけっして無関心であってはならない、ということです。

 国家権力の抑圧・弾圧に抗して自由と民主主義を守る運動。それをどう展開していくか。香港の若者たち、市民と一緒に考え続けたいと思います。

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