アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

ドイツ「右派」の躍進とウクライナ戦争

2024年09月04日 | 国家と戦争
   

 ドイツ東部2州で1日にあった州議会選挙で、「ドイツのための選択肢(AfD)」がデューリンゲン州で初めて第1党に、ザクセン州でも僅差の第2党に躍進しました。日本のメディアはこの結果を、「欧州で広がる右傾化がドイツでも鮮明になった」(3日付京都新聞=共同)と評しています。

 AfD躍進の背景については、「(ショルツ)政権が移民に寛容な政策を進める一方、地域住民の生活はないがしろにされているとの反発は大き(い)」(同)と、同党の「反移民」の主張が躍進の要因だと論評しています。

 こうしたメディアの評価・論評は正しいでしょうか。

 共同通信の現地リポート(3日付)によると、選挙戦の中でAfDの州支部代表は確かに「全ての元凶は移民だ」と「反移民」を強調しています。しかし、同時にこう続けています。

貧困にあえぐドイツ国民を救わず、ウクライナへの支援を語る政権は恥を知るべきだ

 「ウクライナへの軍事支援反対」がAfDの主要政策の1つでした。

 「ウクライナへの軍事支援停止を訴え、予算を生活支援などに使う姿勢を強調し、物価高で政府に不満を持つ人々の受け皿となった」(2日付朝日新聞デジタル)のです。

 さらに、「(AfDと)同じく(ウクライナへの武器)供与に反対する左派新党「ザーラ・ワーゲンクネヒト同盟(BSW)」はデューリンゲン、ザクセン両州で第3党となった」(3日付共同)ことから考えると、AfDの躍進は「反移民」というよりむしろ「ウクライナ軍事支援反対」の方が主要な要因だったとさえ言えるのではないでしょうか。

 6月の欧州議会選挙でも「ウクライナ軍事支援反対」の「右派」が躍進しました。欧州ではウクライナへの軍事支援に反対する世論が確実に広がっていると言えるでしょう。しかもそれが「貧困にあえぐ国民を救わず」と、市民の生活防衛と一体となっているのが特徴です。

 まさに「軍事費を削って福祉・教育・生活に」というスローガンがドイツ、フランスはじめ欧州市民の切実な要求になっているのです。「右派」(あるいは「極右」)であろうと「左派」であろうと、良い主張・政策は良いのです。

 ところが、日本のメディアはこうした実態をほとんど無視するか過小評価して「反移民の右派の躍進」という論調に終始しています。

 NHKはドイツ州議選の結果を2日の朝から再三報じていますが、AfDが「ウクライナ軍事支援反対」を主張したことには一言も触れませんでした(写真右)。他のメディアも(私が見た限り)大同小異です。

 これは、日本を含むG 7が推し進めるウクライナへの軍事支援に不都合な事実は伏せる(あるいは過小評価する)というきわめて意図的・政治的な報道です。 

 政権の意向を忖度し、あるいは政権に同調し、戦争の拡大・継続に通じる報道を行う。これは戦前・戦中の最悪の戦時報道の再現にほかならないことをメディアは肝に銘じるべきです。


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