アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

「10日内閣」の異常報道は何を意味するか

2021年10月05日 | 政権とメディア

    

 岸田文雄内閣が4日、成立しました。メディアは自民党総裁選直後から、その顔ぶれを予想し、組閣後は「新内閣の方針」「新閣僚の抱負」などと大きく報じました(写真右は4日夜のNHK)。これはきわめて異常で滑稽なことです。なぜなら、この岸田内閣は実質わずか10日間の超超短命内閣だからです。

 岸田首相は就任直後の記者会見(写真中)で、今月14日に衆院を解散し、31日に投票という総選挙日程を表明しました。すでに数日前から、「会期末の14日に衆院解散に踏み切る公算が大きくなった」(2日付中国新聞=共同)といわれていましたから、これは既定方針です。

 14日に衆院が解散されれば、その時点で衆院議員は議員資格を失い、岸田内閣は事実上終了します。つまりこの内閣は「三日天下」ならぬ「10日内閣」なのです。総選挙後に次の首班指名・組閣が行われるまで、現内閣が実務面で継続することになりますが、それを考慮しても「4週間内閣」です。

 にもかかわらずメディアは、派閥均衡がどう、新入閣がどうなどと内閣の顔ぶれや岸田氏の発言を細かく報道しています。実質10日の超超短命内閣をこれほど詳細に報道する意味がどこにあるでしょう。まったく無意味であり、その報道ぶりは滑稽でさえあります。

 問題は、この異常な報道が、たんに無内容・滑稽なだけでなく、重大な政治的意味(意図)を持っていることです。

 第1に、今回初入閣した13人(20閣僚中13人という高い割合)や再入閣の自民・公明議員は、選挙ポスターに「〇〇大臣」という肩書を記しアピールすることができます。これは総選挙においてきわめて有利です。沖縄担当相になった西銘恒三郎氏(沖縄4区)などはその典型です。

 第2に、一般的に組閣直後は「御祝儀相場」という意味不明な慣習(国民性)によって、内閣の支持率は高くなります。今回の総選挙はその「御祝儀相場」の中で行われることになります。これが組閣直後の解散という日程にした最大の狙いです。この自民党戦略は以前から分かっていたことでした(9月16日のブログ参照)。
 メディアは知ってか知らずか(おそらく知った上で)この自民党戦略にまんまと乗り、「10日内閣」の異常報道で「御祝儀」をつり上げているのです。

 第3に、ただでさえ「御祝儀相場」があるうえに、今回のように内閣の顔ぶれ、「抱負」などを詳しく報道すれば、「せっかく新しい内閣ができて、新閣僚もやる気なんだから、すぐに辞めさせないで、すこしやらせてみよう」という、これまた日本人特有の意味不明な“温情”が広がる可能性は、けっして小さくありません。それはすなわち、総選挙において、自民党にきわめて有利だということです。

 自民党総裁選から「10日内閣」に至るまで、自民党とメディアが一体となった異常報道。それが自民党の思惑通り総選挙を有利にするかどうか―。試されているのは有権者です。

 

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