辺野古新基地建設をめぐる安倍政権と翁長知事の「和解」後初の協議が23日首相官邸で行われましたが、最も危惧されたことが早くも現実になろうとしています。和解条項の最重要項目である第9項について、双方の「解釈の不一致」が棚上げされたまま、協議を進める(時間稼ぎをする)レールが敷かれようとしているのです。
和解条項第9項は、「原告および利害関係人と被告は、是正の指示の取消訴訟判決確定後は、直ちに、同判決に従い、同主文およびそれを導く理由の趣旨に沿った手続を実施するとともに、その後も同趣旨に従ってお互いに協力し誠実に対応することを確約する」としています。
これは「是正指示取消訴訟」で国が「勝訴」した場合、その後の「埋立承認撤回」などの知事権限もすべて封じて新基地建設を強行しようとするものです。
まさに、「この9項にこそ、『工事中止』を見せ金としつつ、安倍官邸が和解にかけた新基地工事強行戦略の秘策が隠されている」(仲宗根勇元裁判官、22日付沖縄タイムス)のです。
このとんでもない「和解」を受け入れたことについて翁長氏は、「今回の和解は、代執行訴訟と関与取り消し訴訟2件の和解だ」(町田優知事公室長、3月8日県議会答弁)として、その後の知事権限行使は縛られないという、政府とは異なる「解釈」で追及をかわそうとしています。
はたして「第9項」の真相はどうなのか。政府と県の「解釈」を擦り合わせ、「不一致」をなくすことこそ「和解後協議」の最大の焦点でなければならないでしょう。
ところが、協議後の記者会見で「その話は出たか」との記者の質問に、翁長氏はこう答えたのです。
「きょうはこの件はまったくない。和解に関するものは作業部会をつくることと、メンバーを特定したということだ」「そこでその話(和解条項の解釈)もするということなので、そこ(作業部会)で練った後で議論が出てくるのではないかと思っている」(24日付琉球新報)
「作業部会」なるものをつくって、そこで「和解条項の解釈」について話し合うというのです。
ところが一方、菅官房長官は同じく協議後の記者会見で、「和解条項9項の解釈を政府と県が擦り合わせるか」との質問にこう答えています。
「そういうことはないだろう。明快に書いてあるわけだから、それに基づいてお互いに判断する。それに尽きるだろうと思う」(24日付琉球新報)
菅氏は「9項の解釈」について県との擦り合わせはしないというのです。菅氏の言明と翁長氏の会見は明らかに食い違っています。会見で述べたことが本当なら、翁長氏は直ちに菅氏に抗議し発言を撤回させるべきでしょう。
そうでなければ、翁長氏の発言は「第9項」を受け入れた責任追及から逃れるための方便だということになります。
「協議の〝土台”である和解条項の認識のずれを引きずったままの話し合いの先に、『円満解決』は見通せない」(24日付沖縄タイムス)のはあまりにも当然です(そもそも「円満解決」などありえないことは後日述べます)。
辺野古新基地阻止にとってきわめて重大な意味をもつ「和解条項第9項」。安倍政権と翁長氏がその「解釈不一致」を放置し棚上げしたまま「協議」を続けることは絶対に許されません。