日本のメディアの病巣はこんなにも深く大きいのか。改めてそう思わせるのが、自民党総裁選をめぐるマスメディアの報道です。
自民党役員会は20日、総裁選の日程を「9月12日告示、27日投開票」と決めました。現行の規定になった1995年以降で最長、「異例の15日間」です。その狙いを、共同通信はこう配信しました。
「メディア露出を増やし、同時期に行われる立憲民主党代表選をつぶそうという狙いが透ける。…日程を決める上で首相が強く意識したのは…立民代表選だ。…(首相)周辺は「立民がかすんでしまうぐらいメディアを独占するのが大事」と説く」(21日付京都新聞)
京都新聞はこの記事に<メディア独占「立民つぶし」>という大見出しを付けました。
自民が総裁選期間を過去最長にしたのは、メディアに頻出してイメージアップを図ろうとする狙いであることは、共同通信に指摘してもらうまでもなく、自明です。まさに「メディアを独占する」思惑です。
事実、岸田首相の不出馬表明(14日)以降、新聞もテレビも自民党総裁選が「独占」しています。それを来月27日まで1カ月以上続けさせようというのです。
メディアはその自民党の党利党略を知りながら(自ら記事にしながら)、自民党の思惑通り、総裁選の「独占」状況を続けているのです。開いた口がふさがりません。
そもそも、自民党の総裁選も、立民の代表選も、自党の内部問題であり、一般の市民、とりわけ自民や立民の支持者でない市民にとっては、何の関係もありません。公共的意味がきわめて乏しい政党イベントにすぎないのです。
それを「公共放送」であるNHKはじめマスメディアが、微に入り細をうがち(どうでもいいことを)、トップニュースとして報道を続ける。それ自体が異常・不当です。特定政党の宣伝に手を貸していることにほかなりません。
この異常な総裁選報道の陰で重要な問題が後景に追いやられています。今なら、ガザをめぐる情勢、イスラエルのジェノサイドをやめさせる報道を当然トップにすべきです。
自民党総裁選にまつわるメディアの異常・不当は今に始まったことではありません。メディアは毎月世論調査しますが、その中には「次の首相にふさわしいのは誰か」という項目が含まれています。これは事実上、自民党の次期総裁は誰がいいかという人気投票にほかなりません。
メディアは自民党総裁選を異常な頻度・大きさで報道し、自民党はそのメディアの「独占」状況を党利党略に利用する。こうした自民党とメディアの二人三脚、持ちつ持たれつの関係は、日本のマスメディアの腐敗・権力追従を端的に示すものです。
こうした報道を続けている限り、市民のマスメディア離れは加速するばかりです。
なによりも、自民党政権が日米軍事同盟(安保条約)の下で戦争国家化を強めている今、メディアは戦前・戦中の権力追従が何をもたらしたか、自らの負の歴史を真剣に振り返るべきです。