角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

田舎の人口流出と流入。

2014年11月27日 | 地域の話




今日の草履は、彩シリーズ24cm土踏まず付き[四阡八百円]
茶の唐草をベースに、散りばめられた金がお洒落な茶色を組み合わせています。先ごろお亡くなりになった「高倉健さん風」を表現したつもりなのですが、いかがでしょうか。健さんのお人柄は寡黙で実直と云われますが、実は人様への心配りが素晴らしいのだそうです。「寡黙」は私に見習えないとしても、理想の男性像ではあると思います。

一昨日の新聞に秋田県人口の速報値が載っていました。103万人台まで減っています。過去のブログにも書きましたが、およそ二十年前は120万人がこの秋田で暮らしていました。毎年ほぼ1万人ずつ減って、100万人を割るまであと三年かからないかもしれません。十年後、二十年後は推して知るべしでしょう。
冬が来てまた春が来れば、夢と希望を胸に若者たちが都会へと巣立って行きます。いつか戻ってほしいと願うのは、家族も県民も同じと思います。

22日の角館あきんど塾忘年会で、女性お二人との出会いがありました。お一人はかねてからの知人がお連れになった方で、兵庫県に生まれ育った39歳。最近秋田県の地方都市に住まいを設け、培った技術を元に教室を開く準備の最中でした。
こちらの女性がなぜ故郷を飛び出し秋田県で暮らすことになったのか。最大の理由は「チャレンジ」といいます。そのまま故郷で生涯暮らすのもひとつなれど、それでは経験できずに終わる多くがあるのではないか。女性はそう考えたのだそうです。

兵庫県時代から秋田出身の知人がいて、一度訪れた秋田県がどうしても頭から離れなかったといいます。それでチャレンジする土地が秋田県に決まったというのですから、不思議なご縁と言うしかありませんよ。今後の人生スケジュールはまったく白紙といいます。秋田で良縁に恵まれれば終の棲家にもなるであろうし、場合によっては故郷へ戻ることになるかもしれない。言ってみれば「川の流れに身を任せ」ですね。

もうお一人は劇団わらび座の常連さんで、滋賀県にお住いのおばさまです。ちょうどその晩は食事席がすべて埋まっていて、おばさまはたった一人なのに食事ができないでおりました。あきんど塾メンバーであるわらび座の舞台俳優がおばさまに気づき、私たちのテーブルへ招いたことが出会いとなります。
閉会までご一緒でしたから、おおむね二時間ほどをわれわれと共に過ごしました。かなり愉しんでくれたご様子です。

私が西宮家で草履を編んでいることをお話しすると、翌々日わざわざ訪ねてくれました。そこでおばさまの当地に対する思い入れを聞くことになります。
六年前にとある公演でわらび座を知り、すっかりファンになったおばさまは幾度となく当地を訪れていました。いや、「幾度となく」などという言葉では済まされません。近年は月に二度のペースで滋賀県からお越しだそうです。

わらび座から車で10分とかからない角館ですから、おばさまの知人はこの町にも複数おりました。お祭り見物に張番の中まで案内した男性もいれば、たった二度の面識で自宅に泊めてくれた女性もいたといいます。今夏角館高校の甲子園では、角館人にまじり応援席にいたそうです。それらは即ちおばさまのお人柄と、当地を愛する心が伝わるからなのでしょう。
あきんど塾メンバーの中には、千葉県から単身移り住み角館で喫茶店を営む女性もいます。理由や経緯は様々でも、秋田県に深くご縁をお持ちの人は大勢いるんじゃないでしょうか。

夢と希望を胸に都会へ巣立つ若者たちの一方で、秋田へ「夢」「癒し」「愉しさ」を求めて訪れる人々がいます。人口減少、人口流出を止めるのは容易い話ではありません。けれども流入する方々を受け入れ共に愉しむことは、なにほど難しいとは思えません。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする