角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

大河ドラマと平賀源内。

2014年06月14日 | 実演日記




今日の草履は、劇団わらび座で公演中の「げんない~直武を育てた男~」に、田沼意次役で出演している男性俳優さんへ贈る草履です。贈り主さんはかつて「リキノスケ走る!」の出演俳優さんへも草履を贈られた女性で、昨日「田沼様」を伴ってお訪ねくださいました。
こちらは田沼様がご自身で指定された配色ではなく、私が田沼様とお会いし感じたものを表現したつもりです。ベースに「和傘」、組み合わせは「招き猫」、テーマは「古き良き時代が福を招く」であります。

賄賂で失脚した田沼意次とは真逆の、真摯で実直なお人柄と感じ入りました。お歳の頃は私とさほど変わらないでしょうか。故郷岡山県倉敷市を語るその口調と優しい目に、私は「日本人」を見た想いがしましたよ。贈り主さんが明日お引き取りの予定です。手渡されたときの様子は、きっとあとで贈り主さんからご報告をいただけるでしょう。

先日投稿したfacebookで大河ドラマが話題となり、いくつかのコメントをやりとりしました。その中で大河ドラマに「平賀源内」を推す声が複数あります。当地で源内と言えば即ち「小田野直武」につながりますから、平賀源内が大河に採用されれば自ずと直武も登場するというわけですね。大河ドラマに角館の名前が出るなんていうのは、ちょっとした興奮モノですよ。

私が小学生くらいの頃、民放の連続ドラマに平賀源内があったと記憶しています。確か石坂浩二さんだったでしょうか。当時角館の歴史なんてなにほども知りませんから、小田野直武が出たかも分かりません。平賀源内の変わり者ぶりに周囲が翻弄されつつも、夢を追い続ける人間性に惚れて人が集まる人情話。そんなイメージで観ていました。わらび座公演もそんな源内像が表現されています。

以前のブログにも書きましたが、大河ドラマの視聴率というのは「戦国時代」と「幕末」を扱えば、一定の支持が得られると聞いたことがあります。確かにこの二つがとても多いですね。それはきっと合戦シーンを望む人が多いからじゃないかと思うんです。その点において平賀源内は当てはまりません。幕閣の田沼意次が賄賂で失脚するのですから、むしろ平和な時代と云えるでしょうか。

夢と人情に溢れる平賀源内の世界は、ひとまず劇団わらび座で愉しむのがよろしいかと思います。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

いつか天職に。

2014年06月13日 | 実演日記




今日の草履は、彩シリーズ24cm土踏まず付き[四阡八百円]
今日も可愛らしいピンク色で統一してみました。ピンクの濃淡にプリント柄も違いますから、それなりにメリハリも効いたと思います。こうした配色を中高年のおばさまがご自身用でお選びになるのは、私が期待するほど多くありません。おそらく履きたい気持ちはあっても、自分で選ぶには抵抗があるのでしょう。誰にも遠慮なんか要らないんですけどね。

「今日の草履」をお選びは、5月30日のブログにご登場の劇団わらび座に所属する女性俳優さんです。その日は足を手術したばかりのおばあちゃんへ贈りたいとお訪ねでした。そのおばあちゃん、草履が届いてすぐに履いてくれたそうです。足のむくみが軽減してリハビリも順調とのこと。何より嬉しいご報告でした。

そして今日のお訪ねは、間もなく迎えるお母上のお誕生日に贈りたいとのことです。おばあちゃんが気に入って履いている姿を日々見ているお母さんにも、娘としては履かせてあげたいということなのでしょう。そこで私が「今日の草履」をお勧めしました。お母上のお歳を訊けば五十代、ご自身では選べないピンクの草履をあえてプレゼントしようというわけです。女性も即座に『いいですねっ!』となりました。お勧めした手前、お母上にはなんとしても喜んでほしいところです。

わが家の次女と三女も社会人となって二か月半が経ちました。未だ慣れない仕事に無我夢中、悪戦苦闘といった感じです。聞けばすでに離職した同期もいるとか。いざ現場に出てみると想いが違っていたり、本心からその仕事を目指していなかったことに気付いたり、あるいはミスマッチであったりとその理由は様々でしょう。一つの事業所で一生を終えられれば一番良いのですが、実際の世間はなかなかそうはいきません。

私自身草履職人となるまでは紆余曲折があったわけですが、それまでの生業をムダだったとは思っていません。むしろそこまでの経験が今を支えている部分もあります。
朝ドラ「花子とアン」の主人公も、小学校の教師という仕事が好きでありながら、夢をあきらめきれず間もなく東京へと旅立つ場面を迎えます。どんな人もいつか好きな仕事に就ける、いつか天職に巡り合える、そう信じて生きるのが肝要と思うわけです。

先の女性も、聞けば看護学部を卒業して看護師資格をお持ちなんだそうです。けれどもその職に就かなかったのは、ちょうど卒業の時期に劇団わらび座の公演を観たからなんですね。その舞台に魅了され役者を志すに至るわけですが、親としては複雑だったと思いますよ。最後に秋田行きを認めたのは、女性の心の強さだったんでしょうね。そして女性は今舞台に立ち、観客を魅了する立場になりました。

女性曰く、『看護実習は厳しかったですけど、そのときの患者さんたちとの出会いが今のお芝居に役立ってると思うときがあるんです』。
女性のご両親と、いつかお会いしたいと願っています。

さて、16日と17日の二日間を手の休息日とします。18日から30日まで「大人の休日倶楽部乗り放題チケット」期間ですから、その前に少しお休みを入れることにしました。天職であれば不眠不休…というわけにはいかないようです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

角館人の情。

2014年06月12日 | 実演日記




今日の草履は、彩シリーズ23cm土踏まず付き[四阡六百円]
可愛らしいピンク色には、定番のエンジとの組み合わせをまず作ります。華やかな和の情緒が、見るお客様にも笑顔を作ってくれますね。9日のブログでご紹介した石巻市のおばさまから、23cmの追加注文をいただきました。お若い娘さんと言いますから、「今日の草履」を送って差し上げることにします。
可愛らしく上品な花柄のベースがこちらです。



角館草履は一日4足編み上げることを目安にしています。ときにそこへ至らない日があって、それは大きなサイズばかりを編む日とご来客が多い日です。接客が多いとどうしても手の進みが悪くなるんですね。ここ数日の角館は「大人の休日倶楽部乗り放題チケット」を目前に、極端に散策される人影が少なくなっています。そんな状況にもかかわらず、今日は3足半で閉店時刻を迎えました。その理由は…。

札幌市手稲区から修学旅行の中学生がお立ち寄りです。八人ほどのグループが実演席に立ち止まり、西宮家についていくつかの質問を受けました。まずは一千坪を超える敷地にある五つの蔵を巡るよう教えると、みんな『ありがとうございます!』と言ってその場を立ち去ったわけです。15分ほど経ったでしょうか、再度実演席を訪れると、今度は角館についていくつかの質問を受けました。

ご存知の通り北海道は、本州のしかも城下町のような歴史がありません。大らかで明るく、しがらみにとらわれない北海道民の気質が私は大好きなのですが、彼らにはむしろ角館のような歴史の古い町に憧れがあるようです。そういうことならば、草履職人が時間の許す限り角館を語りましょうとばかり、にわか仕込みの「歴史講習会」と相成りました。そこで草履を編む手が止まったわけです。

講習会は30分を超えたでしょうか。彼らもときに自身の考えを述べながら、真摯な態度で角館情報をノートに書き込んでいきます。県外の若者たちにこれだけ真剣に角館を学んでもらえると、そりゃあ嬉しいものですよ。帰り際には、『こんな話、学校じゃゼッタイ教わらないよね~。仕事の手を止めさせてスイませんでした~』と元気に次の目的地へと出発しました。

岡山県からツアーでお越しのおばさまが、しばし丸太椅子に腰を下ろしおしゃべりして行かれました。岡山県と聞けば気候も良く食べ物も美味しいという印象ですが、おばさまの「岡山評」はちょっと意外なものでした。
『岡山県って環境がとてもいいのよ。気候が温暖で作物も美味しいし、大きな企業もあるから就職率も高いのね。でもおかげで過酷な苦労を知らないから、人の情が全国一薄いの。秋田県は冬の厳しさがあるから、助け合いの情があるでしょ。旅行しててもそれが分かるわよ』。

岡山県民が薄情というのは謙遜以外の何物でもないでしょう。それはそれとして、秋田県民が情に厚いと思っていただけたのなら、そこは素直に喜んでいいんじゃないでしょうか。
札幌市の中学生たちにも「角館人の情」がちょっぴりでも伝わってくれたなら、予定数を編めなかったことなどなにほどの問題ではありません。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

父の日も母の勝ち!?

2014年06月10日 | 実演日記




今日の草履は、彩シリーズ25cm土踏まず付き[五阡円]
素朴な色使いの男性用サイズです。黒地に辛子色ですから、季節感を言えば秋のイメージかもしれません。ベースのプリント柄も「とんぼ」ですしね。今日の角館は秋風が欲しいくらいの蒸し暑さでした。そのせいではないでしょうが、「今日の草履」はすでにご愛用者である女性が父の日プレゼントにお持ち帰りです。お洒落な平生地はこちらになります。



「父の日」まであと一週間もなくなりましたが、ここまで角館草履の父の日需要は低調です。はっきり父の日を言葉にしてお買い上げくださったのは、おそらく今日の女性を含めて五人に届かないんじゃないでしょうか。もっともそれは今年に限った話ではありません。母の日と比較したら寂しくなる父の日需要ですが、在庫数を思えばこれくらいが丁度いいとも言えそうです。

西宮家北蔵レストランでは、年に数度「スペシャルランチ」をご提供しています。「父の日ランチ」もその一つで、今日料理長に『メーンはなに?』と訊ねると、胸を張って『ステーキだ!』。
スペシャルランチはかねてから好評のうえ、ステーキと聞いたら食べたくなりますよ。ただし毎回数量限定ですから、お客様優先を考慮すれば私の出る幕はありません。

ただし今年の父の日は、サムライジャパンの第一戦があるんですね。日本時刻で午前10時と言いますから、試合が終わればもう昼食タイムです。これは「父の日ランチ」に強敵じゃないでしょうか。もっとも女性がオーダーできないわけじゃありませんから、おばさまたちがこぞってお召し上がりになるでしょう。

やっぱりここも「母の勝ち」かもしれません。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「親切」を超える何か。

2014年06月09日 | 地域の話




今日の草履は、6月5日のブログで触れた旧田沢湖町にお住いの常連さんが、娘さんへ贈るオーダー草履です。昨日お二人で引き取りにお越しで、「龍が大好き」という割には極普通の娘さんでしたよ。もっとも「龍が好き」だけで、一風変わっていると考えるほうがおかしいのかもしれませんね。きっとお似合いと思います。平生地はこちらです。



一昨日の晩は角館あきんど塾の総会がありました。私がこの会の代表となって六年が経っています。そろそろ後進へ道を譲るのにいい時期と考え、副代表二人と共に昨夜その役職を辞しました。退会するのではなく、今後は一会員として活動に加わりたいと思っています。なかなか楽しい六年間でありました。

「あきんど塾」という名前にしては、あまり収益性の高いイベント活動をしていません。今どき一日や二日のイベントでそんなに儲かるなんてこと自体ありませんし、会員それぞれに本業もあります。ですから現在の活動趣旨は、親睦や異業種交流、情報交換が大きいかもしれませんね。私はそれでいいと思っているんです。「あきんどは人間力」が私の信条でもありますから、いろんな人からいろんな話を聞くことは人間力向上に不可欠でしょう。

現在仙台市に暮らすひとりの会員が、こんな話をしていました。
『秋田県の人が特別親切なんてことはない。震災のガレキ受け入れでは、秋田県人の中に反対した人がいた。秋田県くらいの親切心は日本中どこにでもある。自分たちが特別なんて意識は持たないほうがいい』。
被災地である仙台に暮らしていることで、そういう報道を見聞きしていたのでしょう。当時私も気にしていました。

こうした話を出来るのも、この会のいい所だと思っています。実際その通りですよ。どこの観光地だって、みんなお客様には親切です。商いの世界と限らなくても、日本人は一般に親切じゃないでしょうか。秋田県や角館が「親切」や「おもてなし」で、他県と比較し秀でるなんてことは事実上ありえないとさえ思いますね。ですからそれらも含めた対応力や知識力や行動力、総じて「人間力」がカギだと思うわけです。

今日の夕方、西宮家から帰宅する車中でケータイが鳴りました。表示された電話番号は宮城県、ケータイに転送された電話でしょう。運転中ですからどうしたものか一瞬考えましたが、暫時停車できるスペースがあったので電話を受けました。お電話の主は、石巻市にお住いとおっしゃる中高年のおばさまでした。

『もう八年くらいになるんですけど、そちらで草履を買ったことがあるんです。履き潰してからしばらく忘れていたんですが、津波で流された家をようやく新築しまして、今はフローリングだらけなんですよね。それでそのときの草履を思い出して、今でも作っていらっしゃいますか?』。

娘さんの分と二足、明日の実演でお創りすることを約束すると、とても安堵されたお声に変わりました。三分ほどの一回の電話でご安心いただけたのですから、やっぱり電話に出て良かったです。八年前にはなかった「土踏まず付き」に、少しでも笑顔が増えれくれたら嬉しいですね。親切だけでは得られない喜びが、世の中にはきっとあるはずです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

おっかない大人。

2014年06月06日 | 実演日記




今日の草履は、昨日ご紹介した大分県中津市にお住いの、奥様用のオーダー草履です。奥様のお好きな色をうかがう中で、『今履いてるのはピンク色だけど…、そうねぇ、紫が好きかなぁ』。その言葉を聞いた瞬間、6月3日の「今日の草履」を頭に描きました。そして出来上がったのがこちらです。
色調は紫の濃淡、プリント柄は「猫&うさぎ」になりました。招き猫とはいえ、うさぎにしたらちょっとおっかないですかね。

年に一度県外のとある中学校が、修学旅行のイベントで「職場体験」に西宮家を訪れます。グループ分けされた男女生徒が、30分ほど簡単な仕事を手伝うわけですね。昨日それがありました。
米蔵へ入る前に私の実演席前を通過し、その際元気な挨拶をしてくれます。うちの男子生徒一人が、制帽ではないキャップを被っていました。ツバを後ろにした、いわゆる「キャッチャー被り」ですね。

修学旅行で、しかも職場体験という事業所の中での行事ですから、昭和のおっさんは少し気になるわけですよ。けれども学校が認めているのでしょうし、事業所側の担当者でもない草履職人が注意するのもはばかれます。あえて『キミ、カッコいいな』と声を掛けると、右手を軽く上げて「ドヤ顔」を見せていました。仮に角館の中学生であれば名前を訊いたでしょう。

しばらく前のテレビで俳優の三浦友和さんが、友人三人とのトーク番組でこんな話をしていました。
『昔は俳優の先輩におっかない人がいっぱいいましたよ。勝新太郎さんなんかは近くに寄るだけで怖かったんだけど、そのときの勝さんの年齢って40代なんですよね。今の私なんかもっと年上なのに全然迫力がないし、周りにもそういう空気を持った人ってあまりいませんねぇ』。

この話を聞いて思いました。私たちが子供だった時代は近所にも学校にも、いわゆる世間に「おっかない大人」がいっぱいいましたよ。就職した会社でも、やはり先輩や上司はおっかない人たちでした。別に罵声を浴びせられるとか、口より先に手が飛んでくるとか、そういう「パワハラ」とは違います。年長者や経験を積んだ人というのは、どこか迫力があるものなんでしょう。

時代が変わり、今の世は一般に「優しい」のかもしれません。それが悪いとばかりは言えないにしても、どこかで「カミナリ親父」の存在が懐かしくもあります。私もおそらく、迫力のないおっさんのままで一生を終えるでしょう。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

角館草履と日本の主婦。

2014年06月05日 | 実演日記




今日の草履は、大分県中津市にお住いのおばさまからの、お電話によるオーダー草履です。三年ほど前にお買い上げだった草履がそろそろヘタってきたとのことで、ご夫婦揃ってお買い換えのご注文でした。ご主人用のご希望配色をお訊ねしたところ、『うちのお父さんはハデ好みだから、奇抜な色がいいんじゃない!?』。そこでお作りしたのがこちらです。奇抜かどうかは分かりませんが、ベースの赤はなかなか強烈ですね。さらに強烈なプリント柄がこちらです。



お電話でおばさまは、『あたしの草履がもう限界なのよ。お父さんのはまだ履けるんだけど、どうせだから二つ注文しようと思って…』。ご主人用は「ついで」のようでしたが、むしろ主役級の配色になりましたね。
明日の「今日の草履」は、奥様用をご紹介しましょう。どちらも明日の便で出発です。九州ですから到着まで少しお待ちくださいね~。

「今日の草履」を編んでいるところへ、旧田沢湖町にお住いの常連さんがお立ち寄りでした。ご友人へのプレゼントと、ご自身の娘さんへも履かせてあげたいとのことです。娘さんはおそらく二十代前半と思うのですが、「龍」が大好きなんだそうですよ。この画像には写ってませんが、確かに龍もプリントされています。娘さんの草履はブルーとの組み合わせでオーダーとなりました。こちらも近日の「今日の草履」でご紹介しましょう。

秋田市からお越しのおばさま二人旅。うちのお一人が外反母趾にご苦労されていて、すぐにご自分用をお買い上げくださいました。もうお一人のおばさまは躊躇なくご主人用をお選びです。その様子を見ていたご自分用をお求めのおばさまが、『この人はいつもご主人のことばかりなのよ~』。
ご自分用を差し置いてまずご主人用というおばさまは、珍しいほどではないにしても多くはありません。いずれは「絶滅危惧種」に指定されるのではないかと心配しています。

大仙市からおばさま七人のグループがお立ち寄りでした。みなさん試し履きに大満足のご様子も、今日は持ち合わせの都合でお買い上げを見合わせました。お一人のおばさまが、『よしっ、じぇんこ貯めて出直すべ。今晩からおかず一品減らそ』。
ご家族に対しましてはお詫びの言葉もございません。ですが、むしろこちらのおばさまが標準的な「日本の主婦」ではないかと思う次第です。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

人生を変える異常気象。

2014年06月03日 | 実演日記




今日の草履は、彩シリーズ23cm土踏まず付き[四阡六百円]
こちらも初夏の新柄です。同柄色違いで三色到着したうち、まずは紫色で統一してみました。紫色を好まない方は確かにいらっしゃいますが、逆に「大好き」とおっしゃる方も多いです。しかもプリント柄が「招き猫」ですから、足元から幸運をつかみたい人はきっといるでしょう。平生地はこちらです。



全国的に高気温が云われていますが、角館も例外ではありません。五月下旬から始まった夏日が六月に入って真夏日となり、昨日も今日も33℃に近い気温となりました。正直体が厳しいですよ。この分だと七月には秋風が吹いて、九月には初雪が降るんじゃないかとバカな話で気を紛らわせています。それにしても六月に入ってすぐ、こんなに夜風が心地よく感じるとは驚きでした。

ここ数年起こっている異常気象は、実演席でのおしゃべりにもよく登場します。私がよく話すのは、『あれだけの震災が起こる周期に今の地球があるのですから、ナニが起きても不思議じゃないかもしれませんよ』。多くのお客様は頷きますね。それだけあの震災は大きな出来事でした。

土曜日のこと、岩手県大船渡市から一人旅のおばさまがお越しでした。ミニ草履を見つけると「トイレの神様 足の神様」のおまじないにとても興味を示され、『あぁ、こういう話を聞くと癒されるのよね~』。お知り合いにお土産とのことで五つお買い上げです。
震災被災地の名を聞けば、どうしても「大丈夫でしたか?」と訊いてしまいます。おばさまは、『おばあちゃんが津波で…。隣の家は辛うじて助かったのに、ほんとに紙一重で人生が変わるわよね』。

おばさまのご自宅があった場所は新築が許されたものの、多くの知人は高台移転を余儀なくされたそうです。かつて高台に原野のまま放置されていた土地がうなぎ上りに高騰し、中には「地主様」と呼ばれる暮らしに変わった人もいるとか。それを非難できるものではないにしても、震災が人生を変えたという事実は確かにあるのでしょう。

おばさまに『角館は何度かいらしてるんでしょ?』と訊ねてみると、『ずいぶん前に一度…。そう、若くて可愛かった頃にね』。
震災の傷は、もうだいぶ癒えてるんだと感じました。またいつかお会いできる日をお待ちしたいと思います。

明日一日所用のため草履コーナーをお休みします。明後日には角館も平年並みの気温に戻るようですから、また集中して草履を編めるでしょう。この気温のため休暇をとるわけではありませんが、明日のお休みは体にちょっと嬉しいと思います。「人生を変える」ほどではないにしても、この異常気温はキツかったです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

履かせたい老若。

2014年06月02日 | 実演日記




今日の草履は、東京都世田谷区にお住いの女性からの、ご注文フォームによるオーダー草履です。以前角館を訪れた際にご主人と二人お買い上げくださったとのことで、この度はお買い換えのご注文です。そのときはまだ草履を履けなかったお子さんの分と3足、それぞれにご希望配色がメッセージ欄に綴られておりました。その中でご本人の分、「黄色系でおまかせ」がこちらになります。
本日の便で出発しています。明日には届きますよ~。

せっかくですからご家族分3足、「川の字」に並んだ草履たちをご紹介しましょう。



お子さんの年齢や性別は書かれてありませんでしたが、15cmと言いますからおそらく三歳前後でしょう。ご夫婦で角館をお訪ねくださったときはまだ赤ちゃんだったか、場合によっては生まれていなかったのかもしれません。やがてしっかり歩ける年齢に成長したわが子に草履を履かせてみたいと思い立ったご夫婦には、草履職人としてより日本人のおっさんとして頭が下がる想いですよ。
「日本の文化」は確かに引き継がれています。

一昨日のこと、お若い女性二人が西宮家の「ハイカラさん」の衣装で敷地内を散策されていました。聞けばおひとりは秋田国際教養大学の学生さんで、もうおひとりは故郷の静岡から遊びにいらしたお友達なんだそうです。とにかく終始にこやかで、笑顔の絶えない元気な若者でした。『試し履きしていいですか~』の画像がこちらです。



衣裳を返す時刻となり実演席から姿を消すと、入れ替わるように盛岡市のご夫婦がお立ち寄りです。奥様が布草履を作った経験があり、足に対する健康効果にもご理解がありました。奥様が角館草履を履かせたいと頭に思い描くのは、数年前に脳梗塞を患った八十歳に近いお母上なんですね。でもそれを躊躇させるのは、ご本人がご自身の健康に無頓着となっているからでした。『買ってあげても、面倒だから要らないって言いそうなんですよねぇ』と奥様。確かにそうしたご高齢者がいるとは思います。

そこへさきほどのハイカラさんお二人が戻って見え、『やっぱり買って行くことにしました~』。少ない在庫でしたが、お二人賑やかに配色を選んでくださいましたよ。
その様子を見ていた盛岡市のご主人が、『いや~、こうして若い子たちが草履を履きたいっていうのは、見ててなんか嬉しいですよね』。

角館草履を「履きたい人」そして「履かせたい人」に、年齢などいささかの制約も感じません。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする