角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

外履きにできないワケ。

2007年12月02日 | 実演日記

<生地詳細・素材感>

今日の草履は、一般綿生地シリーズMサイズ23cm土踏まず付き〔4000円〕
紺地に黄色の小花プリントをベースに、緒は同系の紺です。色彩は比較的落ち着いているのですが、ところどころに見える黄色のせいか、『可愛い!』の評価が多かったです。

「今日の草履」をお買い上げくださったのは、劇団わらび座にお越しのおばさまでした。こちらの舞台に出演されている女優さんが私の草履を気に入ってくださっていて、ときどきお客様をご案内する際お立ち寄りになります。
「地元民に愛されるものづくり」を理念とする私には、とっても嬉しいことなんです。

今日のお客様にも言われましたが、『外で履けると嬉しいのにねっ!』。この言葉はランキング上位に位置する定番です。私も外で履けたらもっとイイと思いますね。でも、こうして「編んだ草履」には致命的な欠点があるんです。それは「耐久性」。

かつて「ワラ草履」を履いた、あるいは履かされた体験のあるご年配者、実演席にもたくさん訪れ、昔を懐かしく語ってくださいます。5月17日のブログでもご紹介のように、「ワラ草履」に対する思い出はまだまだかなりの方がお持ちです。
そうした方々が異口同音に口にされるのは、『すぐに壊れてねぇ、そのたびに編まされるわけよぉ』。

戦中・戦後、小学校内の上履きに使用した経験をお持ちの方に訊いてみると、だいたい一週間か十日くらいで壊れた記憶があるそうです。遠足で履いたというおじいさんは、『帰り用に一足スペアを持つんだけど、持ってない奴は裸足で帰ったのもいたなぁ』。
かつて子どもたちが草履を「編まされた」というのは、頻繁に作り変えなければならない手間ひまから、『自分の草履くらい自分で編め』ということだったんでしょうね。

江戸時代以前、旅に履く「ワラジ」は宿場町に必ず売っていて、いつでも買い替えができるようになっていたようです。昔の道路は土、現在はほとんどが舗装整備されています。むしろ現代のほうが磨り減りが早いようにも思えますね。いずれにしてもこうして「編んだ草履」は、耐久性に劣ると言えるでしょう。

その点部屋履きですと、「走る」「跳ねる」「踏ん張る」といった過激な運動が少ない分、草履に与えるダメージも少ないと言えます。さらにフローリング上は滑らかですから、布地の磨り減りも極力抑えることが出来ます。
一日でも長く利用していただくためには、やはり部屋履きとして「癒しの草履」がベストでしょう。

それにもし外で履いていて、鼻緒の一部が切れたときはたいへんです。時代劇のようにイカした遊び人風の男が現れて、『おっと、お嬢さんこいつはいけねぇ。貸してみなせぇ、あっしが直してあげましょう!』なんてことは期待できませんからねぇ。

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