角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

非量産は面白く。

2014年07月29日 | 実演日記




今日の草履は、彩シリーズ23cm土踏まず付き[四阡六百円]
「綺麗」と「優しい」が一つになった配色でしょうか。淡い色調がとても穏やかに感じますね。「今日の草履」をご覧の女性が同じ色で24cmをオーダーされ、その直後こちらの草履も秋田市のおばさまがお持ち帰りになりました。組み合わせに使っているグレー基調の桜花プリントがこれで最後のため、こちらの配色も完売となっています。

この時季多いのが「下見」に訪れるお客様です。お盆を間近に控え、遠くからお越しになる親類縁者に角館散策を愉しんでいただくための下見というわけですね。親戚ばかりでなく、今日は同期会の下見とおっしゃるおばさまとも出会いました。散歩マップを片手に訪れた三人のおばさまは、『いつもここで草履作ってるんでしょ?』と真剣に訊いてましたね。幹事役としては楽しい半分、重責半分といったところでしょうか。

実は八月十六日を法要のためお休みさせていただきます。今月始めの頃でしたか、湯沢市からお越しのおばさま三人がミニ草履を気に入ってくださり、それぞれお買い上げでした。ひとりのおばさまが言うのは、『あの人だぢもこれはきっと喜ぶんでねぇがっ』。詳しく聞くとお盆に同期会の計画があり、20名ほどで角館を散策されるとのこと。日程をうかがうと八月十六日、その日だけはご容赦願いました。

人様の前で何かを創っているというだけでネタになるのでしょう。幹事さんたちは散策コースに私の実演席をよく採用してくださいます。売上につながるかどうかは別として、そういう貢献ができれば私としては十分満足ですね。願わくば幹事さんによる評価が「面白い草履を編んでいる人」であって、「草履を編んでいる面白い人」ではないことを望んでいます。

「満天青空レストラン」という番組をときどき観ます。先日巨大ピーマンを作っている初老の男性が出演していました。通常の四倍ほどの大きさがあって、独特の甘味があるのだそうです。番組MCが問う『なんでまたこんな大きなピーマンを作ろうと思ったんですか?』に対する答えが面白かったですね。
『こんな(狭い)農地でどうせ量産なんかできん。だったら面白いものを作るのがこれからの百姓じゃろう』。

「わが意を得たり」。老人のこの言葉に、心の中で喝采の拍手を贈りましたよ。一日に編める草履の数などたかが知れています。であればとことん面白いものにこだわったらいいんです。売れるか売れないかは「ご縁頼み」かもしれません。けれどもこうして誰かに「観せたい」と思っていただけたら、商いとしても観光に生きる人間としてもありがたい話ではないでしょうか。

本日1999回目のブログ更新でした。
コメント (2)
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