角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

今日は記念日。

2013年12月13日 | 製作日記
何日かぶりにまとまった雪が降りました。朝から雪よせ作業に追われるのは、今冬初です。積もり始めたのが未明のせいか、除雪車が来ません。今日の運転は苦労だったと思いますよ。買い物帰りのカミさんが、下り坂で車が真横を向いたそうです。他に車がいなかったのが幸い、今日のような道路事情が最も疲れますね。

今日12月13日は、私にとってちょっとした記念日です。平成18年のこの日、角館草履に「著作権」が与えられました。そういうものに無関心だった当時、商いの先輩から助言され申請したものです。専門の事務所へ委託しましたから、申請日が何日だったのかも知りません。やがて認可され証書が届き、認証日が「12月13日」だったというわけです。そしてこの12月13日は、三十二年前に他界した実父の誕生日でもありました。生きていれば85回目の誕生日が今日だったことになります。

草履職人となって九年目に入りましたが、ずーっと訊かれ続けているのが『なんでまた草履を編むようになったの?』。草履を編む人のイメージはどうしても年配者でしょうから、私くらいの年齢ではまだ若いと映るのでしょう。すると二代目か三代目、あるいは角館で古くから草履を編む家系というストーリーを期待するのかも知れません。

ただ私で三代目というのは、ある意味外れてはいないんですね。私の祖父母は、いっとき下駄を作る職人でした。祖父が木地を作り、祖母は緒をすげていたそうです。昭和20年代、私が知らない昔の話です。
そして親父はいっとき革靴を作る職人でした。私が小学校に入るかくらいでしたから、それはしっかり記憶にあります。ですから人生のいっときを「履物」でメシを食ったと考えれば、確かに三代目となるわけです。

一ヶ月くらい前でしたか、いくらか見覚えのあるおばあさんに『あなた、“よっこ”の息子さんだってが!?』と声を掛けられました。ずいぶん久しぶりに聞きましたよ。“よっこ”というのは私の親父の愛称で、なんでもおしまいに「こ」を付けるのが当地の方言です。しばしの時間懐かしい話で盛り上がったのですが、親父の愛称を口にする人が今でもいることが嬉しかったですね。

先日、冬用作務衣を買い足しました。ネットショッピングのため詳しく知らず注文したところ、届いた作務衣のタグを見てビックリ。そこには親父の名前がありました。



今冬もしっかり実演を努めて参ります。
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