角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

忘れない観桜会。

2011年04月25日 | 実演日記


今日の草履は、彩シリーズ24cm土踏まず付き〔四阡円〕
赤基調の歌舞伎プリントをベースに、合わせはエンジです。
巻かれてしまうとなにやらゴチャゴチャで分からなくなりますが、こうした賑やかな草履も楽しくてイイものですね。赤は言わずと知れた「元気」の象徴、楽しく明るければまず良しでしょう。立派な歌舞伎の平生地はこちらです。




昨日も今日も寒い角館です。冷たい雨音を聞いていると、咲き初めの一報を近日中にお届けできるとは思えません。よほど早い木で今月末じゃないでしょうか。
この寒さと同調するように、散策される人影もまた寂しいです。今朝郵便局で、武家屋敷通りにお店を持つ方とお会いしました。昨日の日曜日、大型車専用駐車場に入った観光バスの数は4台だったそうです。例年であれば一日200台前後ですから、震災と原発の影響の大きさが推し測れますね。

それでも観光目的で当地を訪れる方は、決して皆無ではありません。奥様が草履を気に入ってくださった東京のご夫婦に、『東北旅行に抵抗はなかったですか?』とお訊ねすると、『まぁ、ないこともないけど、それより桜が楽しみでねぇ。そっちが残念だったよ』。
初角館のご夫婦は、例年の人出を知りません。私が『人を見るだけで疲れるくらいですよ』と笑うと、『じゃあ、案外イイときに来たのかな』とご主人。せっかくの初角館ですから、静かな町で存分に楽しんで欲しいものです。

ご夫婦おふた組が、実演席目がけてお越しです。『以前送ってもらって今も履いてるんですけど、せっかく来たから買って行こうと思って…』。確かに以前お会いしているお顔というのは、すぐに分かりました。『お住まいはどちらでしたか?』とお訊ねすると、『京都ですよっ』。
やはり『東北旅行に抵抗はなかったですか?』と訊いてみると、『一度はキャンセルしたんですけどね、やっぱり考え直して。東北に行くことで、少しでも役に立てるんじゃないかって』。

大げさでなく、熱いものがこみ上げてきました。いつもの桜シーズンであれば、どんなお客様とどんなおしゃべりをしたのか思い出せないこともしばしばです。極めて稀な今年の観桜会を、一生忘れないと今確信しています。
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