角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

被災地からのお客様。

2011年04月28日 | 実演日記


今日の草履は、彩シリーズ22cm土踏まず付き〔四阡円〕
黒基調の桜花プリントをベースに、合わせは紺です。
黒系で統一された色調は、お洒落さが際立ちますね。お若い女性がお選びになると思いますが、私も楽しみに待ちたいと思います。

今日も相変わらずの寒さでした。冷たい雨に風が加わると、ほんとに桜の季節なのかと思ってしまいます。散策のお客様には雨合羽姿が見られました。今日のような天気のときは雨合羽に限りますね。臨機応変に対応できる、おそらく旅慣れた方なのでしょう。

ご夫婦が興味津々実演をご覧でした。角館草履の特徴をご説明すると、奥様がご自分用をお買い上げです。『どちらからお越しです?』のお訊ねに、『仙台からです』とご主人。
これまでも『どちらから…』のお訊ねは日常にありましたが、震災後はお客様の人数が少ないせいもあって、実演席の丸太椅子にお座りになるすべてに訊いています。

ご主人は、『毎日地震のことばっかりなもんだから、気分転換にふたりで出かけて来たんですよ』。隣りで奥様も大きく頷いていました。角館にいても震災の話がひとつも出ない日はないのですから、被災地にいたらそれは推して知るべしでしょう。するとときに、別の世界へ行きたくなるのも分かる気がします。

『じゃあ、被害という被害はなかったんでしょ?』と訊いてみると、『津波の来る場所じゃないですけど、台所とか結構壊れましてねぇ。大工さんも忙しくて、順番待ちなんですよ』と苦笑いのご主人。
確かに津波とは無縁の場所でも、屋根瓦が落ちていたりシャッターが壊れたりの家が、車で走りながらたくさん見かけました。

わが家の次女が今月から仙台暮らしをお話しすると、『それじゃあ心細いでしょう。お父さんもたまには仙台を訪ねてくださいよ』とご主人。震災を体験した人だからこその、優しい言葉に出会いました。
コメント
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