角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

「和」に生きる女性たち。

2011年01月15日 | 実演日記


今日の草履は、彩シリーズ23cm土踏まず付き〔四阡円〕
エンジ基調の桜花プリントをベースに、合わせは紺の麻の葉プリントです。
こちらも角館草履の典型的な配色でしょうか。赤系に紺系の組み合わせは、「和」がよく表現されていて好きなんです。どちらかと言えば中高年のおばさま向きとは思いながら、こういう配色を好まれるお若い女性は必ずいらっしゃると思いますね。

以前一度お越しで、そのときも熱心に草履の話を聞いて行かれたおばあちゃんが、この寒空に再度のご訪問です。そのときも編んでみたいお話でしたが、今日もひとまず挑戦はあきらめました。その代わり、『まず台所で履いでみるべぇ』とご自分用をお買い上げです。
その後のおしゃべりで、こちらのおばあちゃんがなにやら楽しい活動をされていると知ります。

おばあちゃんは旧西木村にお住まいで、ご自宅を使い「グリーンツーリズム」をはじめたのが十年ほど前と言います。ご主人とふたりではじめたこの活動は土地に根付き、なにほどの広告をしない今でも一定の人数が全国から訪ねて見えるそうです。
なかでも修学旅行グループの受け入れは、『子どもたちに元気をもらってるものぉ』と言うのが手に取るように分かるくらい、お話くださるお顔は活き活きしていました。

そんな生きがいを見つけたおばあちゃんに、三年前突然の不幸が襲います。ご主人の他界なんですね。ふたりではじめた活動がひとり欠けるのは、とても大きかったでしょう。おばあちゃんはこれまで通りすべてをひとりで賄うのは無理と判断し、まず冬の「干し餅作り」をやめたそうです。
『おかげで体は楽になったよぉ』と言うおばあちゃんでしたが、長年続けてきた干し餅作りをやめると決めたときは、おそらく断腸の思いだったんじゃないですかね。

現在は26歳の孫娘さんとふたり、出来る限りの活動を続けているそうです。自給自足を学んだり、野山の遊びを覚えたり、自然の中にいっとき身を投じるのが「グリーンツーリズム」でしょう。ちょっとした古き良き時代、そうした「和」に26歳の女性が夢を持って取り組んでいる話を聞かされると、間もなく48歳のおっさんも襟を正そうという気になりますよ。

『次は孫娘さんサ、そういう活動が好きなお婿さんを探してもらえばイイんしなっ』と言うと、『そうそう、んだものぉ。でも、ばあちゃんのためでは結婚しねどーって、いっつも言われでるぅ』。
大声で笑うおばあちゃんとのおしゃべりは、外気の氷点下に反してとても暖かいものでした。
コメント
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