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世界の中心で吉熊が叫ぶ

体長15センチの「吉熊くん」と同居する独身OLの日常生活

映画「ヘルタースケルター」

2012年07月14日 | Weblog
図書館帰りに、映画「ヘルタースケルター」を観てきた。








あらすじ: トップモデルとして芸能界の頂点に君臨し、人々の羨望と嫉妬を一身に集めるりりこ(沢尻エリカ)。だが、その人並み外れた美ぼうとスタイルは全身整形によってもたらされたものだった。そんな秘密を抱えながら弱肉強食を地でいくショウビズの世界をパワフルに渡り歩く彼女だったが、芸能界だけでなく、世間をひっくり返すような事件を引き起こし……。
(シネマトゥディ)

目当ては「ハゲタカ」の鷲津政彦役の大森南朋。
事前情報で、彼が検事役で眼鏡着用、スーツ姿だということを知り、「これは鷲津さんっぽいぞ」という、なんだかマニアックな理由で観に行きたくなった。決して沢尻エリカの濡れ場や乳や尻が観たかったわけじゃない。

いつも私が行く映画の作品は満席ということがない。たしか池袋で観た「サマーウォーズ」の満席が最後だったような気がする。いつもガラガラなのだが、今回の「ヘルタースケルター」はレイトショーということもあり、満席。1時間前に席を取った時点でも「けっこう席が埋まっておりまして…」と映画館の係員が言っていた。


感想は、一言で言うと、面白かった。

作品の善し悪しを考えずに言うと、この言葉しか思いつかない。
集中して観ていたら、あっという間に終わってしまったという感じ。
大森さん目当てで行ったのに、終盤にかけては、この世界感にどっぷりと浸かってしまった。


監督は「さくらん」の蜷川監督。

キャストは本当すごかった。
M女の付き人役の寺島しのぶ、
桃井節炸裂の桃井かおり、
エロい恋人役の窪塚洋介、
豪華だ。

そして、沢尻エリカ。
あの「別に」の人である。
「パッチギ!」で彼女のことが気になったあと、あの「別に」のあとに泣きながらインタビューに答える彼女を観て以来、正直彼女のことはあまり好きではなかった。
でも今回、あの役を演じられる女優は?と思うと、やはり彼女しかいなかったのだと思う。
「○○○舐めたぐらいで調子にのんじゃねーよ!!」というあの台詞をドスの効いた雰囲気で言える女優…今日日、やはり彼女しかいない。ちょっとわざとらしさは感じたものの、なんだか…ちょっと…好きになってしまった…。「好きではない」と思っていつつも、やはりどこかで彼女のことを気にしてしまう。

耳と爪と目玉と性器以外、全身整形で「女子のなりたい顔ナンバー1」のトップスターに昇りつめた主人公りりこ。その副作用で変なあざができ、髪が抜けてしまう。
そのあざが超不気味で、目に焼き付いている。
売れっ子の後輩の存在にいら立つりりこ。
りりこは精神崩壊の末、幻覚を見て、やがて…という流れは、「ブラック・スワン」に似ている。


美を保つことは難しい。
女優やタレントが、普段いかに残酷な時の流れに抗っているということがなんとなく分かった(加齢しても美しい小泉今日子みたいな人は別)。
我々観衆は、たまに出てきた女優やタレントにちょっとでも歳を感じるとすぐに「劣化」と騒ぐ。もうそういうことは言うのを辞めようと思った。みんな、歳取るんだから。それぐらい、終盤のりりこは見ていて辛かったし、感情移入してしまった。


劇中、「どうして神様はまず私達に若さと美しさを最初に与え、そして奪うのでしょう」という台詞がある。
本当にそうだと痛感。
自分に「若さと美しさ」を備えていた時期があったかは不明だが、昔はよくキャバ嬢の誘いやナンパをされた。最近では、熟女パブの誘いしかこない。
でもまあそんなもんか、とも思う。
砂時計の下の部分を考えるのは精神衛生上良くない。上の方の砂を考え、落ちていくスピードをいかに遅くするのかを日々考えることの方が大切だと34歳の私は思うのである。
しかも「ゆるく」
あんまり美に執着すると、それこそりりこみたいに精神を病んでしまいそうで怖い。別に普通の会社員なので、歳相応の美しさを保持できていれば上出来じゃないか。
整形は今後もきっとしない。注射が嫌いで、来年、会社で行われる健康診断の採血検査のことを考えると夜も眠れない痛がりの私が整形手術をするわけがない。コンプレックスのチリチリした天然パーマを半年に一回の縮毛矯正でやっつけるのが精々だ。それにしても、りりこの超ロングヘアは見ていて圧巻だった。前髪ぱっつんは好みではないが。たぶんヅラなんだろうが、あんなにさらさらなロングヘアをたなびかせることができたらさぞかし幸せだろうなあ。いいなあ。本当に羨ましくて悶えそうだった。

大森さん演じる検事・麻田誠が「若さ=美しさ」ではあるけど「美しさ=若さ」ではない。美しさは奥深くて色々な意味を持っている…と言っていた。あの言葉に救われ、作品に未来を感じることができた。

以下、思ったことをつらつらと。

・好きなシーンは、大森さん演じる検事・麻田誠とりりこが水族館で話すシーン。
とても幻想的で、素敵なのだが、話す内容はグロかった…。


・出る女優さんのアイメイクが秀逸で勉強になった。シャドウの入れ方、アイラインの入れ方。
うちの会社、まつ毛エクステ禁止なのだが、あのまつ毛を自給自足でするためにはどうしたらいいのかと真剣に考えてしまった。



・濡れ場は凄かった。ええ、もう。AVかと思った。

・桃井かおりの喫煙シーンを観ていると、こっちまで吸いたくなる。

・ベートーベンの第九の第四楽章が使用されていた。緊迫感あるシーンとマッチしていて興奮。
戸川純の「蛹化の女」、エンディングの「The Klock」(AA=)もゾクゾクきた。

・自分の代わりなんていくらでもいる、という心境ってけっこう辛い。新人モデルの到来で動揺するりりこが観ていて本当に辛かった。新人モデルが出てくるあたりから急に「りりこ、頑張れ」と思っている自分がいた。

映画館を出る時、後ろのカップルが「つまらなかったね」「内容が薄かった」と述べていたが、私は割と好きかも。
もう一回観たいぐらいだ。

私の母は足尾出身。
小学生の時、夜、町の映画館で映画を観たあと、大勢の観客とぞろぞろと帰路に就きながら母は「父ちゃんも母ちゃんもいずれ死んじゃうんだよな」「人生って何だろう」と思ったらしい。
今日、私は駅への暗い夜道を「美とは何ぞや」という思考を脳みそいっぱいにして歩いた。
そういう意味で、こんなふうに余韻に浸れる映画は、きっと私の中で良作のカテゴリーに入るのだろう。



『へルタースケルター』予告編


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6 コメント

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内容がうすいか。。。 (わた)
2012-07-15 10:08:29
あたしはたぶん後ろのカップルと同じ感想になると思う。
原作の味は出てこなそう。
それでも桃井姉さんが見られればいいわ。
いまでもハイライト吸ってるのかしら?
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ハイライト (亮子&吉熊)
2012-07-15 12:03:59
わた殿

原作買ってみたよ。まだ読んでなくて、映画が先になってしまった。

桃井さんの喫煙シーン、カッコよかったよ。
銘柄は確認できなかった…。
返信する
Unknown (野々口)
2012-07-16 10:46:30
見てみたいと思っていたのですが(8割濡れ場目的)、
亮子さんの感想を見て、是非見てみたいと思いました。
原作見てると、薄く感じるんでしょうね。
でも読んでないから楽しめそうな気がします。

早く仕事を引退して人生を楽しみたいと思っている自分としては、砂時計を揺さぶってでも時を早く進めたいです。
砂時計もまだまだの時より、後半の方が見ていて楽しいですしね。
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砂時計 (亮子&吉熊)
2012-07-16 23:22:08
野々口殿

濡れ場、なかなか凄かったです。
痛々しいほどでした。
賛否両論が激しい作品ですが、ぜひご覧くださいませ!

>砂時計もまだまだの時より、後半の方が見ていて楽しいですしね。

後半、穴に砂がスススーッって吸い込まれていくの、面白いですよね。
仕事を引退されて余生を謳歌、いいですよね。

めざせ、米蔵!をスローガンにしましょうか。
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初めまして、私もへルタースケルター見ました (ポルカさん)
2012-07-17 02:16:29
内容薄い?
いやこれ以上に濃い映画なかなかないですよ。自分としてはこのくらいHeavyじゃないと映画見た気がしないかもしれない。
映画館で2回目行くことはないけど、DVDとかBlu-rayで出たら買おうかなと思いました

やっぱり大森南朋さん鷲津にみえましたよね(^-^)/
ハゲタカ大好きです。玩具メーカー買収のバトルをしていて、休憩のとき100円の缶コーヒーが買えないシーンとかも好きです
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ハゲタカ!! (亮子&吉熊)
2012-07-17 21:48:42
ポルカさん殿

はじめまして。
書き込み、ありがとうございます。
私もお腹いっぱい、濃かったと思います。
そして、まだ引きずっています・・・。
ハマってしまいました。

ポルカ様もハゲタカ、大好きなのですね!
嬉しいです。

缶コーヒーの回はたしか「終わりなき入札」ですね。
柴田恭兵の焦燥感がでていました。
私は最後のシーンが好きです。

鷲津さんの
「ようやくご報告できそうです。 あれからの私を。」
に胸キュンです。


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