家人からクレームがついて、最近はレギュラー・コーヒーばかりです。
昔は、レギュラー・コーヒーでしたが、段々と面倒になり、インスタントばかりになってゐたのですが、”せっかく頂き物のカップ用のが沢山あるのだからお父さんはそれにしてー!”とー。
たしかに、ギフト数箱分はあり、シフトが遅い時や休みの日にはそれらをばらして数杯分を小さな魔法瓶に入れて飲んでゐる。
そして、お湯を注いでゐる時に、ふと、むかし原宿にあった平均律といふ珈琲店を思ひだした。
表参道の裏側にあったちいさな店でしたが、とてもよい店で、在京の勤めのころ、原宿にアンテナ・ショップがあったものですから、新宿の本社から、何くれと用向きをつくって出掛けました。
しばらくそのショップの店長代理みたいなこともしてゐたので、もっけの幸ひに足しげく通ひました。
一寸気難しさうなマスターが奥にゐて、店内にはバッハやバロック音楽がとてもよい音量で流れてゐて、確か壁か柱に”静かにしてください”みたいなことが小さく書かれてあって、咳きひとつするにもはばかられるやうな、そんな店でした。
でも、もちろんコーヒーも深みがあって(確か、カップも選べたやうな記憶がありますー)美味しく、その窮屈さにあふれた雰囲気がとても好きで、当時すでに激しいノルマに追はれ始めてゐた小生の、本当に息抜きのできる店でした。
ネットで調べましたら、その後原宿の店は閉店し、学芸大学の近くに再開してゐる、といふー。
まあ、一杯のコーヒーを飲みに学芸大学の店に行くのもオツなものですが、でもしかし、当時すでにバブルの狂乱の足音が聞こへ始めた原宿の、喧騒の大通りの裏の小道の一角のあの静寂さはきっと望むべくもなく、名店に通ってゐたといふよき思ひ出を大切にしてゐた方がよいやうな気もします。
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