あまり話題のものには飛びつかない性分ですが、このCDには飛びついてしまひました。
佐村河内 守作曲/交響曲第一番『HIROSHIMA』
NHKで取り上げて話題になったとのことでしたが、小生は偶然”モーニングバード”で佐村河内を取り上げてゐたのを見て、衝撃を受けました。
天分を神から受けながらも、完全に聴力を失ひ全聾になり、加へて激しい頭痛症や耳鳴り、不安定な神経症、重度の腱鞘炎…、満身創痍の肉体から生まれた、絶対音域を頼りに作曲された交響曲ー。
激しい作曲者のエピソードよりも、衝撃を受けたのは、この時代に、日本で、80分にわたる長大な交響曲が存在した、といふことでした。
80分の長さと云へば、マーラーの2番の交響曲『復活』に匹敵する巨大なものです。
東日本大震災から一ヶ月ののち、暗雲たる思ひでこのレコーディングは始められ、そして、終楽章のコラールのときに、録音会場は強い余震に見舞はれ、けれど楽員やスタッフは微動だにせずに録音を完成させたー、といふ、感動的なエピソードにあふれたものです。
現代音楽のやうに(佐村河内氏自信がそれを嫌っていたといふー)決して難解な曲ではありませんが、果たして自らの脳裏だけで作られた”音楽”には、凡庸な小生などには計り知ることの出来ない密度を持ってゐます。一度や二度聴いたくらゐでは、その中に入ることは不可能でせう。
演奏も(大友直人指揮/東京交響楽団)、まったく、最初から最後まで、緊張の糸が切れない密度のきはめて濃い演奏です。
そして、すこし調べたら、同じ作曲者の”シャコンヌ”の紹介の動画がありました。
音のない世界から生まれでた、色彩感あふれるシャコンヌ!
こちらも、強く感動しました。
無伴奏ヴァイオリンのためのシャコンヌ / 佐村河内守