ソニー・ロリンズを久しぶりに聴く。
高校の同級生で、ジャズに滅法詳しい友人がゐた。
フォークやロックを聴いてゐた小生がクラシックに出会ったのが二十歳ころ。
ブルノ・ヴァルターによるブラームスの4番だった。
こんなに、厳しい音楽があるのかと! と、二、三枚のウロコが落ちた。
数年して、ジャズを聴き始めた。
オムニバスのLPで、マイルス・デビスの「マイルストーン」だった。そのモード手法に、また、二、三枚のウロコが落ちた。
小生がジャズを少しずつ聴きだしたころ、友人とロリンズかコルトレーンか、との話になった。ダルマだったか、角だったか、ウヰスキーを間において酩酊しながら話してゐた。
くだんの友人は絶対的なロリンズ派で、ロリンズの名盤を何枚も聴くべきだ、と半ば強引に教へてくれた。
小生も、「サキソフォン・コロッサス」や「ウェイ・アウト・ウエスト」は聴いたけれど、実はいまひとつピンとこなかった。
そして、まだ数枚のアルバムきり聴いてゐなかったにも関はらず、「俺は、コルトレーンの方が…」と小さくいふと、友人は烈火の声で「ダメだ! あれは、ジャズではない」と、小生をいさめた。
1960年代半ばに録音されたこのアルバムは、音色も技巧も文句のつけやうもないのだけれど、その音楽は、時間の経過にすっかり劣化してしまってゐる。
小生は、今もコルトレーンを聴き続けてゐるけれど、やはり、ロリンズを聴くことは、ない。