正月の新聞だったでせうか、本の特集で宮部みゆき氏の『火車』を名作のベスト3にあげてゐる評論家の方がゐて、あぁ、また読みたい、と久しぶりに読みました。
以前は、一気呵成に読んだ覚えがありますが、今回は、夜な夜な読みました。
勿論、傑作であり、名作です。
現在は、もっと世の中の姿が荒んでゐるやうな気もしますが、
そして、もっと短絡的な事件も多いやうな気もしますが、
まったき丁寧な文章と構成の奥から、
腹をすゑて!身代はり殺人を計画決行したであらう、若い女の寥々とした心象風景が胸をうちます。
まさに、殺す側も殺される側も、共食ひのやうに、都会のなかで埋没してゆく姿が
(この作品には、決定的な殺人のシーンは出てきませんがー)、あぶりだされてゆく姿が、装画の小さな人の姿のやうに、切なく哀しい。