やまがた好日抄

低く暮らし、高く想ふ(byワーズワース)! 
山形の魅力や、日々の関心事を勝手気まま?に…。

特攻隊の…

2008-01-14 | 本や言葉
たまたま、特攻隊についての本を続けて読みました。

一冊目は、『戦艦ミズーリに突入した零戦』(可知 晃著/光文社)。



その艦上で、歴史的な敗戦処理の手続きが行はれた戦艦ミズーリの側面に、不自然な凹みがあった。そのことに注目した著者は、やがてそれが、零戦の特攻攻撃の残滓だと知る。そして、その勇敢なパイロットは誰だったのか? といふ過去を求めての作業が始まります。
著者は、一機の特攻機に対して、3000発以上の機銃の発射があったはずだ、と書く。表紙の写真にあるやうに、それを潜り抜けて片翼を艦船にぶつけ、パイロットは機共々砕け散る。
肉片となったパイロットの遺体は、しかし、乗組員たちの怒とうを押へた時の艦長のはからひによって戦闘のなか、白地に赤丸を印した布に巻かれ、見事に水葬に付された、といふ。まさに、敵ながらあっぱれであったそのパイロットへの、見事な”武士の情け”であった、といふ。


二冊目は、『陸軍特攻・振武寮/生還者の収容施設』(林えいだい著/東方出版)



用意された特攻機のトラブル等で、あるひは恐怖にかられて、引き返してきてしまった特攻隊員たちの、表には出されなかった一種の再教育の施設の所在と実態を求めての著者の過去への探求の話、です。

凄まじい中身が続きますが、周囲の非情な扱ひに自殺を考へる隊員をよそに、当の幹部や参謀たちはフグ刺しとチリ鍋に舌鼓をうってゐた、といふ。
そして、戻ってきた隊員には「貴様ら、何で帰ってきた!」といふばかりであった、といふ。


そして、そして、
見へてくるものがあります。

一見平和である今の世も、大して変はらない。

大胆なビジョンや戦略を打ち出せない首相や政治家たち。
その場限りの戦術をひねり出し、それが無理や失敗となると、見事に責任は取らず、まるで他人の顔で退職金をもらって姿を消す役人たち。

父と、母と、同胞たちと、数時間後の出撃を前にして撮ったであらう写真を見ると、確かに二十歳前後ながら、その凛とした眼差しは、間違ひなくよき日本の未来を見つめてゐたのだらう思ふと、彼らの死が、愚将たちの酒の肴になったことが許されない思ひです。