rakitarouのきままな日常

人間様の虐待で小猫の時に隻眼になったrakitarouの名を借りて政治・医療・歴史その他人間界のもやもやを語ります。

政府が関与しないほど震災対応はスムーズだったようだ

2011-06-21 00:14:41 | 医療

先週日本透析医学会総会が横浜で開催されました。先の震災から3ヶ月ということで、当初の予定とは別に緊急企画として今回の震災対応についての報告が数々の場で行われました。

 

その中で特記すべきことは、被災地において施設崩壊などのために週3回欠かさず透析を行なわねばならない行き場のなくなってしまった患者さん達は、透析医学会を中心とした協力ネットワークが有効に働いたために透析不能死という犠牲を一人も出さずに関東や近県の透析施設に振り分けられ、搬送されたと言うことでした。また血液透析でなく、腹膜透析を行なっている患者さん達は自宅で透析液を医療機材業者から直接取り寄せている関係から、業者が中心となったネットワークで安否が確認されて、こちらも透析不足による犠牲者を出さずに済んだという報告がなされました。

 

緊急時の透析協力ネットワークは神戸の震災の時に停電や断水による透析困難となった教訓を受けて、医学会が中心となって形作られたもので、その後の各地の震災などでも有効に働いてきており、今回かなり広範囲の施設がやられたにも係わらず、やや強引な力技もあったようですが、何とか犠牲者を出さずに急性期を乗り越えたというのは世界に誇るべきことであると思いました。また医療業者も採算の範囲を超えて協力したことは日本の企業倫理の高さを表わしていると考えられます。

 

一方で急性期が過ぎて中長期的な対応が必要になると、政府の仮設住宅や原発対応の遅れから一向に先が見えない状態であり、もとの施設が復活しても患者さんの落ち着き先が決まらないといった問題が出てきています。道路や電気、水道の復興など政府が直接係わらない分野ほど素早い対応がなされた、というのが今回の震災の特徴ですが、透析医療も政府の判断を仰ぐ部分が皆無であったために非常に素早い対応ができて、犠牲者を出さずに済んだと言えます。

 

2009年の日本の透析患者数は約29万人で、1万人あたり22.8人の透析患者さんがいる計算になります。全透析患者さんの9.6%が毎年死亡しますが、導入の方が多く、毎年7−8千名の割で増加しています。患者一人当たりの医療費は年間5−6百万円で、年間1.5兆円の医療費(全医療費の5%弱)が透析に使われます。平均年齢は65.8歳で年々高齢者の透析患者が増加しています。透析医療は公費負担が殆どであり、金食い虫であることも確かですが、日本の透析技術は世界一であり、透析に関する医学的研究、透析膜や器械の性能も世界一の水準にあると思います。これを世界に誇る日本の宝として維持発展させるのか、借金まみれの貧乏国家になることが運命づけられている現状でどこかでブレーキをかけるのか、学会では討議の議題になりませんが、きれい事でない真摯な国民の論議が待たれる所です。

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