rakitarouのきままな日常

人間様の虐待で小猫の時に隻眼になったrakitarouの名を借りて政治・医療・歴史その他人間界のもやもやを語ります。

映画「ハリーとトント」感想

2010-01-20 21:53:16 | 映画

映画 ハリーとトント 感想
監督 ポール・マザースキー、主演 アート・カーニー、トント(猫)

旅や放浪が嫌いなはずの老人と猫が区画整理のためニューヨークの住み家を追い出されて止むなく自分の成人した子供たちを訪ねて歩くうちに多くの人達に出会うというロードムービー。旅の途中で愛猫トントに振り回されることで寄り道の多い旅になるのですが、猫は別に芸をするでもなく自然体で主人公と一緒にいるだけ(出歩きが否そうにも見える)というところが極めて猫らしく好感が持てます。老人問題を軸に据えながら、様々な世代の出会う人達、フラワーチルドレンや老インディアン、実の子供たちも結婚や事業に失敗して皆さえない人生を送っているのですが、それぞれの登場人物が悩みながらも一生懸命生きていることが描かれていて、しかも不思議な優しさや暖かさのようなものが伝わってきました。

70年代のアメリカはベトナム戦争で疲弊していたといってもまだ経済大国の余裕があり貧しいながらも何とか生きてゆくことができる時代だったのでしょう。NYの公園で友人であったポーランド生まれの老人にモルグ(死体置き場)で別れを告げるシーン、呆けてしまった昔の恋人に会いに行き、自分が判らない状態で一緒にダンスをするシーンなどところどころにジンと来る場面がちりばめられ、一生懸命生きて老人になっても死はあっけなく訪れるということを静かに語ります。そして悲しい愛猫トントとの別れも非常にあっさりと描かれます。しかしラスト30秒、新しいトントの出現の予感と子供の笑顔は、老いて死ぬ事も新しい生命と希望につながるというメッセージのように感じ、清々しさを残すラストでした。

金がかかるほどレベルがどんどん落ちてゆくアメリカ映画も「金がかかっていないのに良い映画だ」と言うものが昔からあります。例えば99年に公開されたロバートデニーロ主演の「フローレス」は性同一化障害のFSホフマン演ずるおかま(本当におかまの男優かと思いました)と退役した堅物警察官の奇妙な友情を描いた作品ですが、役者以外は全て安上がりなのに良い映画でした。97年公開の「グッドウイルハンティング」も全体は安上がりながらマットデイモン扮する数学の天才(はめられて社会から消された元大蔵官僚の高橋洋一氏とどうしても重なる)と凡人だけど良き友人(ベンアフレック)との交流が良かったですね(医師のロビンウイリアムスははまり役ですが、レナードの朝の時の方がずっと良かった)。この「ハリーとトント」はテレビでは何度か放映されたのですがDVDが発売されず最近やっと出たものです。動物ものでありながら準主役がこのさりげない扱いというのは希有な作品としてやはりお勧めでしょう。

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